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14型でわずか640g! USB Type-Cのパススルー給電にも対応する「HP E14 G4」を試すモバイルディスプレイの道(3/3 ページ)

日本HPの14型モバイルディスプレイ「HP E14 G4」は、2基のUSB Type-Cポートを使った電力のパススルー機能を備えたユニークな1台だ。実機を使って細かくチェックした。

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パススルー給電に対応! USB充電器は最大出力に注意

 本製品は左右両方のUSB Type-Cポートを併用することで、パススルー給電が行える。つまり通常ならばUSB充電器→PCに直接給電するところ、本製品を間に挟んで、USB充電器→本製品→PCという順序で給電を行うわけだ。USB Type-Cポートの数が少ないノートPCで、充電しながら本製品を使うのに重宝する。


通常の接続方法。充電器からPCへと給電し、そこから本製品へと給電が行われる

本製品はパススルー給電に対応しているので、充電器から本製品へと給電し、そこからPCに給電するという逆向きの接続方法も可能だ

 さて、本製品経由で接続する場合は、本製品がいくらかの電力を消費するため、PCへの給電はそのぶん目減りすると考えられるが、実際どのくらい変わるのだろうか。最大出力が異なる複数のUSB充電器を用意して、本製品を経由しない場合と経由する場合とで、PCへの給電がどのくらい変わるかを測定した。

 まず前提だが、本連載で使用しているノートPC(ThinkPad X1 Carbon 2019)は、USB Power Delivery(PD)での充電には原則45Wが必要で、30Wになると低速充電という扱いになり、さらにそれ以下になると給電が停止しバッテリー駆動に切り替わる仕様になっている。ちなみに最大では65Wまでサポートしている。

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 この環境で最大61WのUSB充電器に接続した場合、PCに流れる電力は直接接続時は「61W」だったのが本製品経由だと「約45W(20V/2.3A前後)」、最大45WのUSB充電器に接続した場合は、直接接続時は「45W」だったのが本製品経由だと「約30W(20V/1.5A前後)」へとそれぞれ低下した。通常はロスなくPCに給電されるのが、本製品の消費電力が間引かれた格好だ。

 さらに最大30WのUSB充電器を使った場合、本製品を経由すると給電自体が停止してしまった。これは30W以下だとUSB PDでの給電を受け付けないPC側の仕様が原因だろう。ただしPCをパススルーで給電できないだけで、この間もPCから本製品に対して映像信号だけは送られてくるので、サブディスプレイとしての利用は可能だった。

 これらの実験結果から言えるのは、本製品を経由することで、USB PDの給電で使われるPDO((Power Data Object)が、60W→45W、45W→30Wといった具合に、ワンランク下がるということだ。さらに今回30WのUSB PD充電器で発生したように、そこでPCの給電に必要な最小電力を下回ると、直接PCにつなげば給電できるにもかかわらず、本製品経由だと給電できないケースが起こりうる。

 もっとも、これはUSB PDの仕様上どこかの段階で必ず起こりうることなので、そうしたギリギリの環境で使用しておいて「パススルー給電がうまくいかない」と目くじらを立てるのは間違っている。PCが最低限必要とする電力をあらかじめ把握しておき、そのワンランク上の給電能力を持つ充電器を使うようにしておけばよいだけの話だ。

 ちなみに本製品の消費電力は最大6Wで、実際に間引かれるのもせいぜい5W(5V/1A)程度でしかない。ただしUSB PDの性質上、電力が間引かれるとワンランク低い電圧と電流の組み合わせ(PDO)が適用されるので、直接接続で45Wが供給されていたのが本製品経由だと30Wしか供給されないといった具合に、見た目には大幅に電力が間引かれたような状態になる。実際に本製品が15Wも消費しているわけではない。


本製品とPCを直結した場合は、消費電力はおおむね5W(5V/1A)程度だ

割り切りは必要だが個性的でユニークな1台

 以上ざっと使ってみたが、HDMIインタフェース、スピーカーをばっさりと省いた、かなり割り切った製品だ。その一方で、片手で簡単に持ち上げて移動できるボディーの軽さは、このクラスの製品(といっても14型の製品はそれほど多くないのだが)の中では突出している。

 前述のパススルー給電については、それ自体も大きなメリットだが、どちらかというと、USB Type-Cポートが両側にあることによるレイアウトの高い自由度の方が、実際に使っていて便利さを実感することが多い。このためだけに本製品を選択する価値はあると感じる。

 唯一好みが分かれるとすれば、ボディーの配色かもしれない。本製品は、正面から見るとベゼルがブラックで、その周囲と背面がシルバーという、他にあまりないツートンカラーになっている。スタイリッシュと感じるユーザーもいるだろうが、黒一色のノートPCと並べて置いた場合、自己主張の強さが目立つ。

 このあたりも含めて、無難な選択肢を求めるユーザーよりも、自身がモバイルディスプレイを使うにあたって何が必要かよく分かっていて、割り切った仕様を受け入れられる人向けの製品という印象だ。3年のオンサイト保証が付帯するので、長く使える製品を探している人にもお勧めしたい。


ベゼルが黒、その周囲がシルバーというユニークな配色。黒一色のノートPCと組み合わせるとかなり自己主張が強い
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