ついに! ようやく? 「Intel Maxシリーズ」2023年1月から出荷 HBM付き「Xeon Max」と高密度実装GPU「Intel GPU Max」(1/3 ページ)
Intelが、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)と機械学習ベースのAI(人工知能)用のCPU/GPUの統一ブランドとして「Intel Max」を立ち上げる。その第1弾製品はSappire Rapidsと呼ばれていたCPU「Xeon Maxプロセッサ」と、Ponte Vecchioと呼ばれていた「Intel Data Center GPU Max」である。
Intelは11月9日(米国太平洋時間)、HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)や機械学習ベースのAI(人工知能)に最適化されたCPUとGPUのブランドとして「Intel Maxシリーズ」を立ち上げることを発表した。同シリーズの第1弾製品として、HBM2Eメモリを統合したCPU「Intel Xeon Max」とエクサスケールGPU「Intel Data Center GPU Max」を2023年1月から順次出荷を開始する。
Xeon Maxを搭載するシステムは30社超、Intel Data Center GPU Maxを搭載するシステムは15社超からリリースされる見通しだ。
Xeon Maxの概要
Xeon Maxは、「Sapphire Rapids」という開発コード名で開発が進められていたCPUのうち、HBM(High Bandwidth Memory)を統合したモデルである。
- →Intelが「次世代Xeonプロセッサ(Sapphire Rapids)」をチラ見せ 広帯域メモリ内蔵バージョンを用意
- →2種類のコアで「省電力」と「高パフォーマンス」を両立――Intelが「Alder Lake」の概要を公開 「Sapphire Rapids」にも新情報
HPCや機械学習のデータ処理をする観点に立つと、CPUはコア自体の改良が進み、その基数も増えることで処理パフォーマンスを向上してきた。一方で、処理したデータを一時保存するメインメモリの帯域(≒速度)が足りないという課題があった。実際にHPCやAIに携わるエンジニアからは「(CPUの進歩と比べると)メモリ帯域の拡大には格差があり、HPCやAIに関するワークロードの処理速度向上においてメモリの速度がボトルネックになりつつある」という旨の指摘がある。
Hyperion Researchのアール・ジョセフCEOからの指摘。CPUのコアパフォーマンスは向上している一方で、メモリの帯域幅にほとんど進化がないことから、メモリのアクセスがHPCやAIに関するワークロードにおけるボトルネックになりつつあるという
そこでXeon Maxでは、CPU内にHBM2E(広帯域メモリ)を統合している。Intelによると、現時点において、「初めてにして唯一の」HBMを統合したx86アーキテクチャCPUだとしている。その主な特徴は以下の通りだ。
- パフォーマンスコア(Pコア)を最大で56基搭載
- 消費電力は350W
- HBM2Eは64GB搭載(16GBスタック×4)
- OSのブートにも対応(コード変更は不要)
- メモリの帯域は毎秒1TB超を確保
- DDR5メモリを搭載することも可能
- HBM2Eと並列して使う場合はソフトウェアの最適化(改修)が必要
- HBM2EをDDR5メモリのキャッシュとして利用する場合はコード変更不要
- Intel Accelerator Engine
Intelによると、AMDのHPC向けCPU「EPYC 7773X」(2.2GHz~3.5GHz/64コア128スレッド)を2基とDDR4-3200メモリを256GB搭載したシステムでHPCGを実行した際の消費電力を100%とした場合、Xeon Maxを2基搭載した構成(HBM2メモリは合計256GB、コア数不明)ではHBM2のみで稼働すると32%、DDR5メモリ(容量に言及なし)を搭載しても37%の消費電力で同じパフォーマンスを発揮できるという。
EPYC 7773Xを搭載するHPCシステムと極力スペックをそろえた状態でHPCGベンチマークテストをしてみると、同CPUの4割弱の消費電力で同じパフォーマンスを発揮できるという。HBM2Eの搭載が大きな効果をもたらしているようである
Xeon Maxに対しては、日本からは理化学研究所(理研) 計算科学研究センターの松岡聡センター長と、京都大学 学術情報メディアセンターの深沢圭一郎准教授からのエンドースメントも寄せられている。
理研の松岡聡氏からのエンドースメント。理研の「富岳(Fugaku)」は世界で初めてHBMを採用したスーパーコンピュータで、XeonにHBMを組み合わせることはHPCやAIコミュニティーにとっての利益になるとしている
関連記事
2種類のコアで「省電力」と「高パフォーマンス」を両立――Intelが「Alder Lake」の概要を公開 「Sapphire Rapids」にも新情報
Intelが報道関係者に技術動向を説明するイベント「Intel Architecture Day 2021」を開催。このイベントでは、次世代のCoreプロセッサとして2021年秋に登場する予定の「Alder Lake」の概要が公開された。Intelが「次世代Xeonプロセッサ(Sapphire Rapids)」をチラ見せ 広帯域メモリ内蔵バージョンを用意
スーパーコンピューターの世界的なイベント「ISC 2021」に合わせて、IntelがHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)に関する取り組みを発表した。その中で、次世代のXeonスケーラブルプロセッサ(開発コード名:Sapphire Rapids)にHBM(広帯域メモリ)を内蔵するバージョンが用意されることが明らかとなった。IntelがPC向けCPU/GPUのロードマップを更新 「Raptor Lake」は2022年後半に
Intelが投資家向けのイベントでCPU/GPUの最新ロードマップを公表した。第12世代Coreプロセッサの後継となる「Raptor Lake(ラプターレイク)」は2022年後半に登場するという。JEDECが「HBM3」の仕様書を公開 転送速度は毎秒819GBに
メモリの規格を策定する業界団体であるJEDECは1月27日(米国東部時間)、次世代のメモリである「HBM3(High Bandwidth Memory 3)」の仕様書を公開した。Intelがファウンドリ事業のイノベーション促進に向けて10億ドルの基金を設立 RISC-V団体にも加盟
米Intelは、自社で運営するファウンドリ事業のイノベーション促進に向けて10億ドル(約1150億円)の基金を設立すると発表した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.