プロ絵師が「iPad Pro 2022」をレビュー! 「ホバー以外に得るものがなく、ホバーのために得る価値がある」という境地に至った理由:ある日のペン・ボード・ガジェット(2/4 ページ)
イラストレーター refeiaさんの連載第5弾は、Appleのハイエンドタブレット「12.9インチiPad Pro」です。ようやく実装されたホバー機能はイラスト作成に寄与するのでしょうか?
ついに実装されたホバー機能
それでは、本題のホバー機能を見ていきましょう。
iPad Proは2022年モデルから、Apple Pencilが画面上12mmまで離れていても位置を検知できる機能が追加されました。ホバーは電磁気センサー型の液タブでは20年前から当たり前、静電気センサー型のWindowsタブレットなどでも以前から(精度はともかく)珍しくない機能で、iPadが最後発になります。
従来のホバー機能だと、筆を下ろす前に正確な位置やブラシのサイズ感を把握するのが主な目的でしたが、iPad Proでは、アプリによっては色や混色の結果までプレビューすることもできます。後出しでは強めに勝ちに行くAppleらしいできです。
また、他社で従来ありがちだった、筆を下ろした時にカーソルがジャンプしたり、傾けるとずれたりするような不審な挙動はなく、全体的に信頼感を持って正確に使えます。
アプリの対応状況はまちまち
PCのように最初からマウスカーソルがあるのでアプリが自然と対応できていた状況と違い、今まで「ホバーは無し」で長いことやってきたiPadには、ホバーカーソルの表示自体、アプリが対応する必要があります。そして、執筆時点でいくつかめぼしいアプリをピックアップしてみた対応状況は以下のようになります。
カジュアル寄りのアプリは、対応が遅れているように見えますね。とはいえ、カジュアル用途のユーザーが最新のiPad Proをバンバン買うわけではないと思いますし、がっつりやりたい人が多そうな「Procreate」と「CLIP STUDIO PAINT」が対応しているので、ひとまずはOKだと思います。
対応しているアプリにも、全てのブラシでカーソルが見えるわけではなかったり、プレビューカーソルと実際に描いた時のブラシサイズが大きく異なる場合があったりなど、純正メモアプリも含めて違和感が残るものが少なからずあります。iPadのホバーの世界は始まったばかりですし、今後じっくり完成度が上がっていくと期待していればいいでしょう。
また、iPadのPC液タブ化に便利な「Luna Display」や「Astropad」もホバーに対応していて、以前よりも違和感なく作業できるようになっています。これもうれしい更新です。
今までホバー無しで描けていたなら不要?
ところで、今はiPadだけで素晴らしいイラストを仕上げる絵師さんがとても多いです。最初からホバー無しが当たり前のネイティブiPad絵師も少なからずいることでしょう。そこに浮かぶのは「ホバーって必要なものだったのか?」という疑問です。
これについては、「必要とまでは言わないけど、無いよりはあった方が良いのは絶対」という答えになります。PC操作でタッチディスプレイとマウスを使い分けると便利なのは、マウスしかない間は分からなかったですしね。遠いUIまで視線を動かしてブラシサイズをチェックしたり、1筆目はアンドゥ前提だったり、大きなブラシをあまり使わない製作スタイルに自然になっていたりと、負担や制約になっていることに気づかないケースもあると思います。
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