レビュー

M3ファミリー搭載の新型iMacと16インチMacBook Proを試して分かったこと(2/2 ページ)

Appleが新たに投入したSoC「Apple M3ファミリー」を搭載したiMacとMacBook Proシリーズが発売を迎える。一足先に実機に触れた林信行氏が、試して分かったこととは?

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Dynamic Caching機能の搭載やAV1のデコード処理にも対応

 M2以前のプロセッサからM3ファミリーへのアップグレードは、こうした単純性能比以外でも恩恵がある。まず挙げられるのはGPUだ。今後のApple Siliconで標準採用となるであろうDynamic Cachingという仕組みを導入している。GPUで使用するメモリ量は、これまでは最大でどれくらい使いそうかのあたりをつけて、そのメモリをずっとGPUが占有していたが、Dynamic Cachingでは実際に必要とするメモリ量をリアルタイムで計算しながら動的に(つまり常に変化させながら)ハードウェア処理で割り当てる。これによりメモリがより有効に利用される。

 また、よく行う処理を高速化するメディアエンジンと呼ばれるプロセッサのコンポーネントに、M2ファミリーではProResと呼ばれる高品位のビデオ圧縮フォーマットをリアルタイム処理する機能を備えていた。M3ではそれに加えて、YouTubeやNetflixなど多くの動画サービスのストリーミングで使われているAV1と呼ばれる動画圧縮フォーマットのデコード機能が追加された。

 つまり、これまではCPUやGPUに負荷をかけていたこれらの処理をメディアエンジンが請け負ってくれることで、CPUやGPUに余力が生まれるのだ。さらに、M3 Max搭載のMacBook ProではProRes形式の48本の4K映像または13本の8K映像を処理しつつ、さらにCPUとGPUの余力で色の補正や映像効果を加えることが可能だという。

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「Dynamic Caching」によって、ユニファイドメモリをより効率的に使えるようになる

ノートPCにはない大画面デスクトップPCならではの魅力

 ここまではM3プロセッサの話を中心に製品を見てきたが、ここからはiMacとMacBook Pro、それぞれの製品としてのその他の特徴をおさらいしよう。

 2023年で25周年を迎える人気のオールインワンデスクトップPC、iMacは4K(3840×2160ピクセル)を上回る4.5K(4480×2520ピクセル)の解像度を24インチの大きなディスプレイで楽しめる製品だ。

 これまでノートPCしか使ったことがない人に一言だけ伝えたいのは、画面が大きく、画面の位置が頭の高さにあるデスクトップPCは使っていて心地よく、首や肩への負担も少ない。いつもノートPCの画面をのぞき込むように下向き加減で作業をしている人には、ぜひ一度、頭に近い高さで垂直かつ大画面で作業する快適さを体感してほしい。


グリーン/イエロー/オレンジ/ピンク/パープル/ブルー/シルバーから選べる新型iMac

 iMacを使っていない時もオーナーを楽しい気分にさせ、部屋に彩りを与えてくれる個性豊かな7色のカラーバリエーションも、iMacならではの特徴だ。何と本体色だけでなく、付属のキーボードやトラックパッドにマウス、さらには付属のケーブル類までも本体とコーディネートされた配色が行われている。


新型24インチiMacでは、本体カラーはもちろん、付属品まで統一されているのが見どころだ

 前モデルはM1チップだったため、搭載メモリ(ユニファイドメモリ)が16GBまでしか選べなかったが、M3の新モデルでは24GB構成も選べる。実は日常的なアプリの利用では、プロセッサ性能以上に、このメモリ搭載量が快適さを大きく左右する。同時にたくさんのアプリを開いていても快適に作業できる。

 より大きなメモリを搭載できるのは、MacBook Proにおいても同様だ(ただし、MacBook ProではM2チップモデルで既に24GB構成が選べたので、搭載メモリが増量されるのはM2 ProとM2 Maxモデルのみ)。

 元々、MacBook Proシリーズは高速なSSDを採用しているが、M3ファミリーが暗号化処理にも対応したストレージコントローラーを備えているため、こういったストレージへのアクセス速度もさらに向上しているという。

 常に最高性能を目指し続けるMacBook Proシリーズだが、今回はGPUのデザインを大幅に進化させたM3ファミリーを搭載したことで、飛躍的に性能向上を果たした。

 実はこうした高い性能が求められるのは何もプロのクリエイター分野だけではなく、例えばゲノム解析などの研究分野、さらにはeスポーツなどに代表されるゲームプレイも性能を発揮する分野だ。最近、Appleはこの両領域への進出にも力を入れている。

 特に最新OSのmacOS Sonomaからは、快適なゲームプレイをサポートする機能の「ゲームモード」(対応ゲームを起動すると自動的にオンになる)が搭載され、他のプラットフォームからのゲームの移植をサポートする開発環境も充実し始めている。


macOS Sonomaから導入された「ゲームモード」では、MacのCPUとGPUが自動的にゲーム最優先で処理されるようになる。同時にAirPodsやパッドなど、ワイヤレス接続のデバイスのレイテンシを低減してくれる
新型16インチMacBook Proに、PlayStation 5のゲームコントローラー「DualSense ワイヤレスコントローラー」を接続してソウルライクアクションRPG「Lies of P」をプレイ。リアルなグラフィックスとサウンドを楽しめ、DualSense ワイヤレスコントローラーにはプレイ中の振動まで伝わってきてPlayStation 5でプレイしているような錯覚に陥るほどだ

 試しに今、Mac用ゲームとして最も凝ったグラフィックス表現をしていると言われる「Lies of P」をプレイしたが、ほぼ家庭用ゲーム機をも上回りそうなリアルな映像と音の表現に驚かされた。

 今後登場するであろうMacBook AirやMac studio、Mac miniも含めてM3ファミリー搭載のMacは、これまで乗り換えを悩んでいた人にとっても、非常にいい製品アップグレードの機会となることだろう。

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