インタビュー

自分の庭のように使ってもらいたい──ソニービル跡地「Ginza Sony Park」が単なるショールームではない理由(3/4 ページ)

Ginza Sony Parkを運営するソニー企業の社長で、Ginza Sony Park Project主宰の永野大輔氏に、Ginza Sony Parkの狙いを聞いた。

永野社長「余白を大切にしている」

 さらに、永野社長は「余白を大切にしている」とも語る。

 「地上の吹き抜け空間などを随所に設けた。こうした余白のスペースは、人々が自由に散策したり、休憩したりできる空間であり、公園そのものである」(永野社長)

 かつてのソニービルは地上8階建てだったが、Ginza Sony Parkは5階建てになっている。これも、数寄屋橋交差点という銀座の入口に余白を生み出すための工夫だという。

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 ソニービルは8階の高さであったことに比較すると、Ginza Sony Parkの屋内は4階までであり、半分の高さに抑えている。これも「余白」という狙いだ。

 さらに、全体的にコンクリートを外に出した構造にしている点にもこだわりがある。「道路や橋、トンネルもコンクリートで作られており、それがむき出しになっている。Ginza Sony Parkは、ソニーの建物ではあるが、コンクリートをむき出しにすることで、それらと同様に公共建築という印象を持たせた」という。

 また、「3階や4階で、濃密なアクティビティーを体験した後に、2階から1階のスロープや階段を下りながら、クールダウンをし、銀座の街を眺めながら、街に出られる。エンターテインメント施設の多くが、扉を出た途端にオン/オフが一気に変わるのとは異なる体験ができる。全てをアクティビティーで埋めるのではなく、余白がもたらす体験も楽しんでもらいたい」としている。

 Ginza Sony Parkでは、具体的な来場者目標は設定していないが、2021年9月までの解体途中に公園として展開していた約3年間、コロナ禍ではあったが854万人が来場したという。1日平均9000人~1万人が訪れており、今後もこれを上回る実績を目指したいとした。

 もともと、Ginza Sony Park Projectは12年前の2013年にスタートし、当初はソニービルの建て替えを目指したものだった。

 「ソニーらしく、ユニークに建て替えを行いたいと考え、公園を作るプロジェクトとなった。人がやらないことをやり、ユニークなことに挑戦し続けてきたソニーの企業文化があるからこそ、来街者に新たな体験ができ、新しい感動を生む場所を提供できる」と永野社長は話す。

 ウォークマンが音楽を聞く場所を家から外に広げ、プレイステーションによって大人が楽しめるゲーム機を生み出し、aiboによってロボットを可愛がるという提案を行ってきたように、新たな文化を創ってきたソニーの姿勢がGinza Sony Parkにもつながっているとも語る。

 Ginza Sony Parkは、プラットフォームとしての役割を果たす拠点とも位置付けられるという。

 「ソニービルがオープンした時には、ソニーは電機メーカーであった。だが、今のソニーグループは事業が多角化し、ショールームとしての役割だけでは、これらを吸収できない」(永野社長)

 「変化し続ける事業に対応したプラットフォームとしての役割を果たすことが大切である。例えるなら、スマートフォンというプラットフォームがGinza Sony Parkであり、スマホで動作するアプリが、プログラムやアクティビティーのようなものだ。使用するアプリケーションが変化し、進化するように、アクティビティーという活動を新たにインストールすることで、Ginza Sony Parkでの体験も次々に変化する。次に来たときには、全く違う体験ができる場所になる」(永野社長)

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