従来のガレリアと比べて異なるのは、「RadiForce」シリーズや「DuraVision」シリーズ、金融トレーディング環境といった高度に専門化された分野のディスプレイ展示だ。これらは普段目にする機会が少ないだろうが、実に興味深い。
まずはRadiForceだが、これは医療向けディスプレイシステムの製品群だ。医療現場で正しい診断を行うためのディスプレイには、レントゲンやCT、MRIなどモノクロの微妙な濃淡を描き分ける階調再現性と解像力、中長期で運用できる表示安定性、そして保守性が非常に高いレベルで求められる。診察室や手術室で使われるディスプレイでは、その画質が命に直結することもあり得るわけだが、そうしたシビアな画質評価が行われる環境で、RadiForceは豊富な採用実績を持つ。
RadiForceではデータを映し出すためのディスプレイだけではなく、複数の画像・映像を一元管理するための信号配信マネージャーといったシステムまでも提供しており、新ガレリアの展示でもその一端を再現している。内視鏡の鮮やかな映像や階調豊かかつコントラスト感に富んだX線透視画像などが同一画面上に整然とレイアウトされた表示の美しさに、医療関係でない方でも目を奪われることだろう。まさにディスプレイメーカーEIZOの集大成ともいうべきシリーズだ。
一方のDuraVisionは、産業市場向けのディスプレイ製品群だ。一口に産業用といっても実態はさまざまだが、工場機械やシステムへの組み込みをはじめ、情報端末用、監視カメラ映像を表示するセキュリティ用、各国の船級の要件を満たす船舶用、鉄道(駅ホーム)用などが挙げられる。用途に応じた多彩な製品を用意しており、いずれもその市場に特化した機能・性能を備え、ハウジングなどの自由度も高い。ブランド名が見えない組み込み型のディスプレイも多いため、気づかないことも多いが、我々の生活にそっとEIZOは入り込んでいるのだ。
シリーズ共通の特徴は「頑丈」であること。DuraVisionの導入先には24時間駆動が前提の業務もあれば、粉じんや結露への高い耐久性を求められる環境もある。DuraVisionにはEIZOが長年のディスプレイ開発、製造で培った高度な技術が盛り込まれ、こうした業務に耐える品質の産業用ディスプレイを実現しているのだ。4K×2K(4096×2160ドット)対応モデルや展示機はないが裸眼3D対応モデルなど、その時代の新技術を生かした特定市場向けディスプレイもラインアップしている。
EIZOは新技術の吸収にも貪欲だ。2014年2月にEIZO本社敷地内(石川県白山市)に完成する予定の「オプティカルボンディング」加工ラインも、DuraVisionシリーズの強みをさらに補強することになる。
オプティカルボンディングとは、通常は空気層となっている「液晶モジュール」と「クリアパネル(またはタッチパネル)」の隙間を樹脂素材(光学弾性樹脂)で埋めて貼り合せる技術だ。これにより、輝度の向上、映り込みの抑制、結露の防止、耐久性向上、タッチパネルとの一体感向上(視差低減)といったメリットが得られる。スマートフォンやタブレットといった小さな画面サイズで採用例が増えつつある技術(ダイレクトボンディングなどとも呼ばれる)だが、EIZOでは36型の大画面まで自社で加工できる施設を用意するのがポイントだ。
オプティカルボンディングは、日光の影響を受けやすい屋外でも画面反射が抑えられることから、当面は船舶の操舵室に設置する電子海図表示用ディスプレイのオプションとして用意する。半屋外や照明の明るい商業施設、旅客用途、さらにはコンシューマー向けなど、幅広い市場で活用が見込める技術だ。
金融トレーディング環境の展示は、実際に証券会社のトレーダーが使用しているシステムを再現したもので、これは従来のガレリアから継続して置かれている。
狭額縁設計のFlexScan EVシリーズを縦位置表示で4台並べ、トムソン・ロイターの情報ツールおよび専用キーボードと、日本ヒューレット・パッカード(HP)のワークステーションを組み合わせた構成だ。4台のフルHD液晶ディスプレイに表やグラフがみっちりと表示され、その手前に特殊なファンクションキーを多数備えたキーボードが2台置かれた複雑なシステムに思えるが、これでもトレーダーのデスクまわりとしてはスッキリしているという。
金融機関向けの専用キーボードはともかく、ディスプレイは一般市場向けのFlexScan EVシリーズなので、個人のトレーダーでも同じようなマルチディスプレイを構築可能だ。
なお、新ガレリアの一角にはEIZOブレンドの歴史と導入事例を紹介するコーナーもある。1968年に創業して白黒テレビのOEM生産を始め、1985年には自社設計のコンピュータ向けCRTディスプレイを開発・製造、ディスプレイデバイスの主流がCRTから液晶へ移行する流れにも即応し、国内にとどまらず、海外競争力の強化に努めるEIZOディスプレイの歴史――この展示を眺めていると、製品の購入意欲が一段と高まるかもしれない。
導入事例としては、ドイツの空港における航空管制、スウェーデンでの大規模なPCゲーム大会(e-Sportsイベント)、オーストラリアの医療機関、フランスの自動車(PSA・プジョーシトロエン)デザインセンター、日本のトヨタ自動車サポートセンターなど、ワールドワイドの幅広い用途でEIZOディスプレイの採用が進んでいることを再認識する。まさに、世界が認めた日本発の高品位ディスプレイだ。
このコーナーの隠れた目玉として、CRTディスプレイの展示にも注目したい。かつて名機と呼ばれた21型CRTディスプレイ「FlexScan E78F」と、そのフライヤーを展示しているのだ。1997年に49万円で発売された当時、欲しくても買えず、涙を飲んだ読者の方もいらっしゃるのではないだろうか。実際、新ガレリアでは新製品そっちのけで、FlexScan E78Fを感慨深げな表情で眺めている方も見られた。
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