高解像度化とともに、昨今のディスプレイを選定するうえでの新たな要素となるのが「画素密度」だ。ディスプレイにおける画素密度とは、表示の精細さを示すスペックであり、その値は通常ppi(ピーピーアイ)で表記される。ppiとはpixels per inchの略であり、1インチ(2.54センチ)あたりに配置される画素数のことだ(1平方インチあたりではない)。
液晶ディスプレイの画面サイズを変えずに、画素と画素の距離(画素ピッチ)を縮めていけばppiは増し、この数値が高いほうが高精細な表示となる。例えば100ppiでは2.54センチの幅に100の画素、300ppiでは同じ幅に300もの画素が密集して敷き詰められるというわけだ。
昨今はこの画素密度が急激に上昇している傾向にある。単体のディスプレイ製品を見ても、最近は24型〜27型程度の画面サイズに4Kもの高解像度を詰め込んだ超高画素密度ディスプレイが話題だ。当初は一部のハイエンド層のみが注視していたジャンルだが、2014年には低価格な製品が続々と登場し、一般ユーザーの中にも興味を持つ人が増えている。
こうした超高画素密度ディスプレイを選ぶ前に知っておきたいのが、急激な高画素密度化がもたらした「新しい解像度の考え方」だ。
PCディスプレイは、WindowsのデスクトップUIが基準としてきた表示密度の96dpi(dot per inch)に合わせて、画素密度を96ppi程度にした製品が中心だ。Windows 8以降の新しいスタート画面などのModern UIは、135dpiが基準(表示機器の画素密度に応じて100%、140%、180%に自動で切り替わる)だが、デスクトップUIの基準値は96dpiを継承している。
これを受けて従来のPC向けディスプレイは、OSやアプリケーションが一定の表示密度(Windowsでいえば96ppi)であることを前提に設計されていた。96dpiという基準が根底にあることから、液晶パネルの高解像度化(画素数の増加)に応じて画面サイズも大型化していったため、「解像度の高さ(画素数の多さ)=作業スペースの広さ」と単純に考えればよかったと言える。
ディスプレイの画素密度が高ければ、それだけOSやアプリケーションの表示は細かくなるが、実用できないほど高画素密度のディスプレイは存在しなかったことから、大きな問題に発展しなかった。画素密度の高い低いによって、アイコンや文字が多少大きく見えたり、小さく見えたりするが、ユーザーが十分識別できる表示の細かさだったのだ。
これに対して、4Kクラスの超高画素密度ディスプレイでは、必ずしも「解像度の高さ(画素数の多さ)=作業スペースの広さ」とならない点に注意したい。近年はWindows 8以降のModern UIをはじめ、OSやアプリケーションの表示密度(dpi)が固定ではなく、可変であるとして設計されている。つまり、同じ画面サイズでも表示密度が固定である必要はなく、OS側のスケーリング機能により滑らかな拡大表示を行うことも可能だ。
その最大のメリットは「非常に高精細な表示」を実現できることにある。例えば24型のUHD 4Kディスプレイを使って、これを24型フルHD相当の作業スペースになるまで拡大表示したとしよう。UHD 4K(3840×2160ピクセル)はフルHD(1920×1080ピクセル)と比較して縦横2倍の解像度があるため、200%のスケーリング拡大表示となる。
従来は液晶パネルの1ピクセルで表示していたOS表示上の1ピクセルが、縦横2倍の4ピクセルで描画されるため、これがOS側のスケーリング機能と相まって、非常に精細で滑らかな表示となるのだ。
文章では少々伝えにくいが、高画素密度表示が一般化しているスマートフォンと、従来の低画素密度のPCディスプレイで表示を見比べてみれば、そのメリットが直ちに理解できるだろう。
スマートフォンの滑らかで鮮明な表示に対して、PCディスプレイの表示はザラついたように見え、画素の格子が視認できて、斜め線がギザギザに見えたり、文字やアイコンの描画が粗いと感じるかもしれない。スマートフォンやタブレットの使用頻度が高いユーザーは、PCディスプレイの表示に違和感を覚えたこともあるのではないだろうか?
これが4Kクラスの超高画素密度ディスプレイならば、スマートフォンのように滑らかな表示が可能なわけだ。それもスマートフォンのように小さな画面ではなく、PC向けディスプレイの大きな画面いっぱいに緻密な描写が広がるのだから、実際に見るとその高画質に驚かされる人も少なくないだろう。
実際の利用シーンにおいては、「高画素写真のフォトレタッチで、拡大/縮小しなくてもフォーカスや手ブレを判別しやすい」「デザインやCADソフトで、図版の細部や文字、数値の視認性が向上する」「PDFや電子書籍などで、細かい文字が判読しやすく、フォントの違いも明確になる」などの利点があり、作業効率アップへの貢献が期待できる。
もちろん、先に紹介した「24型の4KディスプレイでフルHD相当の作業スペースに拡大表示」というのは一例に過ぎない。アイコンや文字を多少小さくしても作業スペースを広く取りたいのであれば、スケーリングの拡大率を下げればよく、逆に作業スペースを狭くしても大きめの表示で視認性を高めたい場合は拡大率を上げればよいのだ。こうした融通が利く点も超高画素密度ディスプレイの優位性となる。
とはいえ、超高画素密度ディスプレイで作業スペースを広く取るため、スケーリングの拡大率を下げるのにも、実用上の限界がある点は覚えておきたい。
例えば、前述のように4Kディスプレイでも24型のような小さな画面サイズを選択すれば、視認性確保のためにスケーリング拡大率を上げる必要があり、結果として実解像度に対して広い作業スペースを確保できなくなる。視聴距離を縮めることで、スケーリング拡大率を多少下げても視認できる場合もあるが、ディスプレイとの距離を詰め過ぎると、使用中に目や首の動きが大きくなり、身体にかかる負担が増えるため、おすすめできない。
当然ながら、画面サイズが大きいほうが作業スペースとスケーリング拡大率の調整に余裕が持てるので、よく分からないという人は、現状よりも一回り以上は大きい画面サイズの超高画素密度ディスプレイを選択しておけば、無理なく快適な環境を構築できるだろう(その際、ディスプレイの物理的な専有面積にも注意が必要だが)。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2014年12月17日
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