ネットの脅威はテロの時代に――ユージン・カスペルスキーに聞く:Kaspersky Press Tour 2010(1)(2/2 ページ)
ロシアのセキュリティベンダー、Kaspersky Labがドイツでプレスツアーを実施。ビールの祭典、オクトーバーフェストでミュンヘンの街が沸き立つ中、CEOのユージン・カスペルスキー氏に話を聞いた。
―― 最近インテルがマカフィーを買収しましたが
カスペルスキー あー、ハッピーだね(笑)
―― このことがセキュリティ業界に与える影響をどう考えてますか?
カスペルスキー まず、ハードウェアを抱えるインテルがセキュリティに参入することで、ハードウェアを考慮した新しいセキュリティが生まれるかもしれない。ただしその一方で、マカフィーはエンドポイントへの影響力を失うだろう。つまり、これまでやってきた従来のアンチウイルスソフトといった分野ではシェアを落とすことになると思う。それを競合が奪う機会が生まれるわけだ(笑)。
とにかくエンドユーザーにとっては、インテルが資本を投下することで、ハードウェアに密接した、それがどんなものかは分からないが、次世代のセキュリティ技術が生まれるということではよいニュースだ。
―― ここで出たインテルのように、ハードウェアを考慮したセキュリティ技術、という点についてカスペルスキーとしてどう考えていますか?
カスペルスキー 我々はソフトウェアベンダーであり、ソフトウェアでの経験は長いがハードウェアはそうではない。ただし、ハードウェアについてもすでに我々が技術を提供してきた100以上のパートナーが存在する。この分野はそれらのベンダーがやっていくだろう。我々は今後もソフトウェアとサービスにフォーカスしたソリューションを提供していく。
―― えーと、ちなみに日本のパッケージ(Kaspersky Internet Security 2011)はこんなのですが、どう思います?
カスペルスキー おー、ははは。クールだね。クールだ。
―― これ1つのパッケージじゃ分からないですけど、リアルな店舗でパッケージが並ぶと顔がくっつくんですよ
カスペルスキー あっはっは。んー、うふふ。いいね。私は自分の顔が嫌いなんだが、これはいい
―― 例えば、手元にカスペルスキーの製品がなくて、どうしてもPCを使う必要がある場合は、どのセキュリティベンダーの製品を使うべきでしょうか
カスペルスキー 1つアドバイスがあるとすれば、全部信用しないほうがいい(笑)。もちろん100%の安全というものはないわけだが、仮にその場合はブラウザのセキュリティを上げる、Eメールは開かない、USBデバイスなどの外部デバイスは接続しないといった、かなり制限された使い方になると思う。あるいはPCの電源を切る、そしてユーザーは眠る(笑)
―― サイバー犯罪は金銭目的がメインになっていますが、テロリズムを志向した脅威は?
カスペルスキー Stefan Tanase(EEMEAのシニアセキュリティリサーチャー)が別のトラックでプレゼンしていたが、(金銭を目的としてできるだけ広範囲にマルウェアを拡散させるのではなく)ターゲットを絞って攻撃するマルウェアがある。このタイプはいわばサイバーテロのためのアルゴリズムだ。
―― 実際に、ある国家がこういった犯罪を支援する、ということは起きているのでしょうか
カスペルスキー 通常のマルウェアとは異なり、このタイプのものは非常に複雑で、かつ洗練されているため、特定の人が作っていると考えられる。確証はないが、各国の諜報機関の関与も疑われるだろう。もちろん、証拠があるわけではない。
―― 最後に日本のユーザーにメッセージを
カスペルスキー 世界的にテクノロジーが大きく変化するときは同時に危険でもある。オンライン犯罪、先ほど出てきたサイバーテロもそうだが、そういった状況下でコンシューマーも、企業、政府、すべてにインターネットのセキュリティが必要とされ、今後ますます重要になるだろう。サイバー犯罪、サイバーテロが現実的になる中で、これまで以上にITの脅威について意識してほしいと思う。
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