「IPS226V」実力診断――イチキュッパで“S-IPS II”搭載の21.5型フルHD液晶:改良版IPSパネルの画質は!?(3/3 ページ)
2万円前後のフルHD液晶ディスプレイが出てきたときはTN方式でもうれしかったが、すぐにIPS方式もその価格帯まで下りてきた。しかも“改良型IPS”というから驚きだ。
S-IPS IIの画質をチェックする
それでは、表示性能の評価をしていこう。評価にはいつものようにエックスライトの「i1 Pro」(製品パッケージとしては「i1Basic」)を用いている。テスト内容はソフトウェアキャリブレーションを行い、sRGB環境におけるガンマカーブの精度と色再現性の2つを検証するというものだ。せっかくなので、テスト内容はIPS236Vと同一の条件を採って、両機の比較ができるようにした。
まずはガンマカーブの検証だが、ここではsRGBモードで測定した。sRGBモードでは明るさ調整しかできないので、一切の調整は行わず、素の状態で測定している。結果は下図の通りだ。なかなかきれいなラインを描いているレッドとグリーンに対して、ブルーのずれが気になる。これはIPS236Vでも見られた傾向だが、IPS236Vよりもブルーのずれが大きい(青のカラーバランスが少しずれている)。調整するにしても、青が思うように増減しなかったりとOSDのクセがあるので難しい。
色再現性の検証はMac OS XのColorSyncユーティリティを用いて、先に作成したプロファイルとsRGBのプロファイルを比較した。多くの領域においてズレが生じており、精度としてはいまひとつだ。また、IPS236Vとの色域の比較も添えた。どちらも初期設定で測定したものだが、IPS226のほうが一回り小さい(色域がわずかに狭い)結果となった。
最後に目視の印象も述べておくが、基本的には長所、短所ともIPS236Vと同様の傾向だ。ムラについては、輝度ムラは散見されたものの、高低の差は小さい。普通に表示しているぶんには、気になることはないだろう。パネル表面における粒状の乱反射は、やはり画面を凝視すると目に付く。筆者はあまり気にならないほうなので、1日か2日程度で慣れたが、この点が気になる人は実機を確認してみるといいだろう。
視野角はIPSらしく広視野を確保できている。この点においては、TNパネル搭載の液晶ディスプレイにない満足感が得られるはずだ。真横に近い角度では白っぽくなるが、通常の利用においては問題にならない。ただし、黒の視野角についてはIPS236Vと同様、角度によって黒浮き、紫被りすることがある。
動画の表示性能もIPS236Vと同じような印象だ。ゆっくりスクロールする被写体やFPSのような激しい動きのゲームでは残像が散見されるが、動画共有サイトの映像やDVD-Videoの映画タイトルなどの視聴でブレが気になるほどではなかった。
エックスライトのカラーマネジメントツール注目製品
今回の測定に用いたエックスライトの「i1Basic」は、測色器の「i1Pro」が付属し、ディスプレイのキャリブレーションに機能を特化したパッケージだ。名前の通り、i1シリーズの中ではエントリーモデルにあたるが、i1Proはスペクトル方式を採用した測色器で、フィルター方式のエントリーモデル「i1Display 2」に比べて、検出精度がかなり高い。i1Basicをベースとして、より高度なカラーマネジメント環境を構築したい場合は、必要に応じてソフトウェアの機能を拡張することも可能だ。i1シリーズの製品情報はこちら。
また、エックスライトはオールインワンタイプのカラーコントロールソリューションとして「ColorMunki」シリーズも用意している。こちらはi1Proに近い精度を確保したスペクトル方式の測色器とウィザード形式の専用ソフトを備えており、ディスプレイ/プロジェクター/プリンタのキャリブレーション、スポットカラーの測定、カスタムカラーパレットの作成などが行える。ラインアップはフォトグラファー向けの「ColorMunki Photo」と、デザイナー向けの「ColorMunki Design」があり、いずれもi1Pro付属のパッケージより安価だ。ColorMunkiシリーズの製品情報はこちら。
日本国内ではこれらの製品を加賀電子が取り扱っており、クリエイター向けオンラインショップ「KGDirect」や「CGiN」で購入できる。両サイトでのi1Basicの販売価格は16万7160円、ColorMunki PhotoとColorMunki Designの販売価格はいずれも5万4800円だ。
IPSをより身近にする1台
一通りテストした感想を述べると、やはりIPS236Vと同様に、液晶パネル自体の感触は悪くないが、液晶ディスプレイとしては画作り、設置性、操作性などに改善の余地が見られる。IPS236Vが搭載するUH-IPSより新型のS-IPS IIパネルを採用しているということで、画質面での向上を期待する向きもあるだろうが、開口率の向上によってバックライト光をより無駄なく使えるようになった点で進化しているものの、特別な高画質化技術などが追加されたわけではないようで、見た目の印象はそう変わらない。
とはいえ、実売価格で2万円を切るような製品に手間暇をじっくりかけてもいられないのは当然のこと。「IPS=高画質モデル」というこれまでの流れから、思わず評価のハードルが上がってしまうものだが、この価格帯では相当健闘していることは間違いない。安価なTN方式のフルHD液晶ディスプレイがあふれる中、同じような価格でIPSならではの広視野角な表示環境を入手できるのだから、喜ばしいことは確かだ。
高速応答を重視するゲーム用途や色再現性にこだわる用途には向かないが、広視野角かつ低価格な汎用のフルHD液晶ディスプレイとして、やはり要注目の1台といえる。
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