ラオスにITは、あるのか?ないのか?:山谷剛史の「アジアン・アイティー」(3/3 ページ)
日本にいてベトナム、カンボジア、ラオス、と聞くと、どうしても硝煙の香りをいまだに感じてしまう。しかし、ラオスはITを忘れるほどに“のんびり”だった!
高価なものはオープンスペースの1階に
ラオスの主要産業は農業で、ビエンチャンでも農業に従事する人が多い。ビエンチャンから車で15分も走れば道路は未舗装になる。知り合ったラオス人にビエンチャンで一般的な世帯を紹介してもらい、ビエンチャンに隣接する村の一軒家を訪問した。
この村の住宅は、その多くが2階建てだが、1階は駐車場と土間の多目的スペースになっており、2階以上を住居として利用している。多くの家や商店でラジオと小さなブラウン管テレビを持っていて、農場で休憩に使う小屋には、ラジオやmp3プレーヤーがスピーカーと一緒に置かれていた。一部の世帯には、1階のオープンスペースにトヨタなどの“外車”が駐車してある。
塀のような隣の家と隔てるものがないので、隣家の1階には簡単に“侵入”できるが、高級外車の防犯対策がまったくなされてないように、人々はお互いを信用して生活しているようだ。
食事になると、オープンスペースに家族が集まり、隣の家族と一緒にラオスの総菜ともち米のおにぎりを食べる。総菜も炊いたもち米も市場で買えるので、料理をする必要はない。これは、隣のタイでも同様で、聞くと両国で料理に興味を持たない人も多く、そのため、冷蔵庫や炊飯器を使う機会も少ないそうだ。
先ほども紹介したように、住居の多くは1階がオープンスペースになっているが、みんなで食事をする1階にテレビがあり、冷蔵庫も炊飯器も1階だ。ついでにいえば、洗濯機も1階においてある。2階は広いワンルームとなっていて、壁に家族の写真やタイ、ラオスで人気のあるアイドルのポスターが貼ってあるが、家具は少なく、部屋の中はシンプルだ。
1階が土間のオープンスペースになっている理由は、浸水することが多いためだ。もちろん、1階の家電は防水仕様ではない。浸水が予想されたら、その場にいる家族総出で2階に運ぶ。そのため、炊飯器はもちろん、テレビや冷蔵庫も、持ち運べる小型の製品が選ばれるという。「軽い液晶テレビに買い換えないのですか?」と聞けば、「テレビが壊れたら修理屋で直す。完全に壊れるまで徹底的に使いますよ」との返事だった。ラオスでも民間の修理屋は頼りにされていて、製品の世代交代はなかなか進まないようだ。
所得水準が低いラオスではPCを持つ世帯が少ない。しかし、携帯電話はほとんどの人が所有している。人気があるのは、チャットに便利なQWERTYキーボードを搭載したモデルだ。PCの個人所有が少ない国でよくあるように、ラオスでもインターネットカフェを利用するユーザーが多い。しかし、携帯電話やインターネットカフェなどから利用するインターネットサービスでは、隣国からの赤い影の影響に直面しているという。これらについては次回報告したい。
関連記事
- タイの地方都市でどっこい生きてる“Socket 370マザー”
やあ!タイの地方都市にようこそ。これは僕が使っている「Wellcom」の携帯電話。安いけどタイ製だから信頼できるんだ。え、なに? そ、そんなことって……! - 電気? つ、使えますよ……、晴れていれば──「西チベット」にITはありえるのか
外国人の立ち入りが難しいチベット自治区ラサから、さらに難度の高い西チベットに突入! ラサはまだ「都会」だった!! チベットの奥地で彼が見たIT事情とは!!! - 失礼な! 電気は通っていますよ!!──チベットの“大都市”でIT事情を探る
日本では「ヒマラヤ!」の印象が強いチベット。情勢不安定で入域が難しく、生活する人の姿が見えてこない。PCやケータイを串、いや、駆使する人はいるのか? - 「限りなく透明に近い日本」がITで貢献する
この連載で4回にわたって「キルギス」と「ウズベキスタン」のIT事情を取り上げた。動乱に揺れる両国で実感じた“日本の存在感”とは。 - キルギスのインターネットカフェに潜入した
キルギスとウズベキスタンの騒乱が日本でも報じられている。現代の民族運動ではインターネットが大きく影響するが、両国ではちょっと事情が異なるようだ。 - 異国で働くおじさんの土産は「dynabook」
中央アジアをズンズンと突き進む辺境ライターがキルギスタンとウズベキスタンのPCユーザーに出会った。旧ソ連製家電で埋まる彼らが使うPCはドコ製? - ウズベキスタンで日本の中古PCを売る男
硝煙残るウルムチを突破して中央アジアのキルギスに潜入したアジアの辺境ライターがウズベキスタンに突撃。エネルギッシュなバザールで何を見た? - 月収1万円でハイエンド携帯電話を選ぶキルギスのIT事情
アジアの辺境ライターが、よせばいいのに硝煙残るウルムチから中央アジアに突撃した。くれぐれもお気をつけて。えっ、“かの国”より動きやすいって! - 僧侶も気になる海賊版──バンコクのIT格差を“ヤワラー”で知る
信心深い国民性の一方で、政権が何度となく“力”で入れ替わる激動のタイ王国。しかし、そういうこととは関係なく、PCショップを巡るのであった。 - 「ブラウン管テレビすらない」中国農村の“家電下郷”効果
この連載でも繰り返し紹介している都市と農村の格差。家電の普及でその格差を是正する「家電下郷」の実態を探るべく、筆者は中国奥地へ足を踏み入れた。 - 「家電を買って明るい農村!」政策でPCが売れる?
金融危機で沿岸部の富裕層が損をして、農村は「なにそれ?」であっても、貧富の差が“超えられない壁”の中国で、格差是正政策が進んでいるとかいないとか。 - 北京上海じゃ分からない──「絶対多数」の中国人民IT事情
もうすぐ始まるであろう“歴史ある世界規模のスポーツイベント”に合わせて多数の観光客が北京を訪れる。だが、北京や上海のような「国際都市」で目にする中国事情は、ごく一部の限られた話なのだ。 - 中国復帰10年めの香港電脳事情
返還後に「100万ドルの夜景」もだいぶ変わったと聞く香港。10年でどれだけ中国に染まったのか。電脳街からのリポート。キーワードは「水貨」だ。 - べトナム「美人」PCユーザーのデスクトップを見てきましたっ!
日本の工場が大挙して進出しているベトナム。ITmediaとしては現地進出のための統計資料が喜ばれそうだが、そういう難しい話は抜きにしてベトナムの生活に根付いたPCを見たい。 - 中国の貧しい村にITはあるか?
経済成長著しくITも都市では普及している中国だが、農村部など貧しい村にITはあるのだろうか? 国家級貧困県に登録された場所に行くとともに、都会の中の村も訪ね、そこにITがあるか探してみた。 - ゲルにITはあるか?──モンゴルで見たIT事情
「青い空と緑の大地をはるかかなたで区切る見渡す限りの地平線」というイメージのモンゴル。その首都ウランバートルのIT事情は実に面白いのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.