米国で感じた支援の心:海外の皆さん、ありがとう
オバマ米大統領の「日本の皆さん、あなたたちは1人じゃない」の演説とともに、全米で震災支援が行われている。ここではMicrosoftの拠点であるシアトルの活動を紹介しよう。
ワシントン州で700万ドルの義援金が寄せられた
3月19日、シアトル・センター(ワシントン州シアトル)にあるモニュメント“Kobe Bell”において、「Seattle Japan Relief主催による追悼式典がおこなわれた。Seattle Japan Reliefは東日本大震災を受けてシアトルに拠点を置く日系企業や団体などを中心に設立された団体で、設立以来、募金活動などの支援活動を積極的に実施している。
Kobe Bellと呼ばれる釣り鐘は、神戸市とシアトルが姉妹都市となったことを記念して1962年に神戸市から寄贈されたものだ。1995年1月17日に起きた阪神淡路大震災以降は、震災追悼で毎年同日に鳴らされる。鎮魂の象徴としても知られるKobe Bellの下で行われた東日本大震災の追悼式典には数百名のシアトル市民が集まったほか、在シアトル日本国総領事の太田清和氏、ワシントン州知事のクリスティン・グレゴア氏も参列した。
グレゴア氏は「日本はワシントン州にとって最大の交易国の1つであり、この惨事は他人事ではない」と述べたほか、Microsoft、Boeing、Nintendo USなど、地元有力企業の支援状況を紹介し、ワシントン州ではこれまでに700万ドル以上の寄付が集まり、将来的には、この2倍の規模にしていきたいと語った。
Microsoftなどの在シアトル企業が積極的な支援を
震災直後から、シアトルでは事業規模の大小を問わず、多くの地元企業や団体が支援活動を行っている。特に、創業者のビル・ゲイツ氏や現CEOのスティーブ・バルマー氏が親日家として知られるMicrosoftは、自社のWebページで25万ドルの現金を含む200万ドル分の寄付を確約した。現金以外はソフトウェアの寄付などが含まれる。さらに、集まった寄付と同じ金額を企業が上乗せして寄付する、米国では一般的な「マッチング」と呼ばれる募金活動を従業員を対象にして実施している。
当初、マッチングの対象はアジア太平洋地域の従業員で、日本、および、ニュージーランドの震災に対して最大10万ドルの募金を行っていたが、今後は米国のフルタイムの従業員にも対象を拡大し、年間で従業員1人当たり最大1万2000ドルのマッチング募金を実施する予定だ。これ以外にも、今回の震災で被害を受けたユーザーが迅速に事業を立て直せるように、サポートやソフトウェアのライセンスを無償で提供するなどの支援を行っている。
Boeingは、本社機能をシアトルからイリノイ州シカゴに移したが、製造拠点は現在もシアトルの郊外にあって多くの社員が残っている。そのBoeingも、会社と従業員から集まった200万ドルを米国赤十字に寄付している。また、シアトルに本社を置くNintendo USは、米国の従業員を対象にしたマッチング募金を実施している。加えて、Nintendo USがオーナーのシアトル・マリナーズでは、シーズン開幕後の6ゲームを震災支援試合として、従業員やファンからの寄付を対象に最大10万ドルのマッチングを保証し、赤十字に寄付するとしている。
このほかにも、Amazon.com、Costco、Starbucksといった地元有力企業がオンラインや実店舗で義援金を募っている。もちろん、日系人のグループも支援活動を行っていて、チャリティーイベントが開催されている。
日本への関心を持ちつづけてもらうために
海外在住の日本人は、母国から離れているが故に、余計に心配や不安を募らせて、情報収集に奔走している。このような日本の情報を必要としている米国在住の日本人向けに、AT&TとVerizonは日本向けの通話を無料とするサービスを実施した。また、NHKの番組を放送している米国の有料ケーブルTVチャンネル「TVジャパン」も3月末日まで無料で視聴可能とした。
東日本大震災の直後は、シアトルのローカル放送局でも連日多くの時間を割いて日本の被害に関するニュースが放送され、支援の募金を呼びかけていた。しかし、最近の米国で放送されるニュース番組では、日本の震災に関するリポートは極端に少なくなっており、福島第一原発の事故問題が取り上げられるだけとなっている。
このように、報道の興味が震災そのものから移りつつある中で、シアトルのランドシンボルである「スペース・ニードル」タワーが4月4日、赤と白の“日本カラー”で電飾された。米国で過去の出来事になりつつある東日本大震災をもう一度思い起こし、継続した支援を呼びかけるためだ。この先も必要とされる復興支援に限らず、ビジネス、観光など、日本への関心を持ち続けてもらえるように何をしていくのかが、海外在住者を含めた日本人が海外に向けて取り組む重要なテーマとなるだろう。
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