“Z”に肉薄した新型「VAIO S」のフルフラットボディを丸裸にする:完全分解×開発秘話(5/5 ページ)
洗練されたフルフラットボディに、ハイエンドクラスのパーツをみっちりと詰め込んだ「VAIO S」。大幅に進化した13.3型の主力モバイルノートPCを分解し、内部構造に迫る。
変わり続けることに価値を見いだすVAIO、その1つの成果となった“S”
VAIO Sは薄型フルフラットボディとはいうものの、光学ドライブを内蔵した13.3型ワイド液晶搭載モデルなので、単純に本体サイズや重量の数値だけを見ると、モバイルPCとして少々インパクトに欠けると思うかもしれない。
しかし、これまで見てきた通り、トータルバランスが非常に優れている点は特筆に値する。新型VAIO Sに触れてみると、VAIO Zをとことん作り込めたからこそ到達できたハイレベルな快適さが、より求めやすい価格帯で実現できていることが分かるだろう。
VAIOのモバイルノートPCは、モデルチェンジの度にデザインを積極的に変更し続けている。今回の新型VAIO Sも人気の高いVAIO Zで打ち出したシリンダーフォルムなどのデザインコンセプトを継承せず、まったく新しいフルフラットなデザインに挑戦してきた。そしてそれに合わせて、内部の設計も一新している。
例えば、MacBook Proシリーズのように、統一したデザインを継続することでブランドの認知拡大やコスト抑制を狙う製品は少なくないが、VAIOが採るのは真逆の戦略といえる。宮入氏は「VAIOに求められるのは新しい世界への変化で、今回も新アーキテクチャの搭載に加えて、デザインが新しくなることに、多くの方から期待を寄せていただいている。今後もどんどん変わって、進化し続けていくのが、VAIOでやるべき重要な仕事だと思う」と、VAIOならではの価値を説く。
こうした開発陣の探求心と、そこから得られる技術やノウハウの蓄積が自信となり、昨今のVAIOノートの高い完成度を生み出す土壌となっているのは間違いない。実際、開発陣へのインタビューの最後に、新型VAIO Sの満足度を自己採点してもらったところ、宮入氏の120点をはじめ、全員が95点以上という、かつてない高得点の答えが返ってきて驚いた。セールストークもあるのだろうが、本当に自信がなければ、ここまで全員でいい切れないものだ。
ソニーは2010年4月、それまで東京都と長野県安曇野市に分かれていたVAIOの開発担当を長野(長野ビジネスセンター)に集結させることで、製品開発の効率化を図ったが、宮入氏が「開発拠点の一極集中により、例えばVAIO Zを筆頭とするモバイルノートのよさが、全シャシーにうまく広がってきているイメージ。開発中には何度も決定を下すタイミングがあるが、必要なメンバーがすぐにそろうようになったので、製品化のスピードアップにも貢献していると思う」と語るように、その効果が徐々に現れてきているようだ。
そして、今後のVAIOモバイルノートはどうなるのか?
最後に余談だが、2011年5月下旬に入り、海外では新型VAIO Sの新モデルが発表された。光沢感あるブラウンとマットなゴールドを組み合わせたボディカラーに、1600×900ドット表示の13.3型ワイド液晶ディスプレイを採用するなど、よりハイグレード寄りのモデルだ。
また、ソニーが2011年4月26日に国内で開催したAndroidタブレット「Sony Tablet」の発表会では、新型VAIO Sのフルフラットボディを継承したような薄型ボディのモバイルノートPC「Ultimate Mobile PC」を2011年に投入することが明らかにされた。
毎年の傾向や各社の動向から、近いうちに登場すると予想されるVAIOの2011年夏モデルだが、VAIO Sに海外モデルと同様のアップデートはあるのか、そして謎の薄型モバイルノートPCはいつのタイミングで出てくるのか、興味は尽きない。
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