ビックとコジマのハザマで震えるメーカー営業マン:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
量販店が合併すると仕入れが一本化できて効率的! というのは、量販店の事情。製品を納入するメーカーは、実にありがたくないイベントだったりする。
「合併による効率化」はあくまで量販店の側の事情
ほかにも、量販店の合併によって双方に出入りしているメーカーの営業マンが同一人物だったのが判明して物議を醸すことがある。メーカーでは通常、直接のライバルとなる量販店の本部担当は、それぞれ別の営業マンを割り当てることが多い。こうしておけば、一方でなんらかの特価商材が出ていても我関せずの立場を取れるし、競合店舗の施策を聞かれたときにうっかり口を滑らせることもない。
ところが人員の都合などで、こうしたライバル店舗にも同じ営業マンが出入りせざるを得ないケースがある。これが量販店の合併によって明らかになってしまうと、価格情報がライバル店舗に筒抜けだったのはお前のせいだとか、あの特価商材をうちには持って来なかったのはなぜだ、などなど、バイヤーを激怒させるケースが発生する。頭を下げて担当者を替えれば表向きは終息するが、その後やりにくくなるのは必至だ。
以上、量販店の合併によって発生するメーカーの悲劇を見てきたが、量販店同士の合併でなくても、ある量販店の元店員が別の量販店に転職した場合に、こうした条件の違いが発覚することはなくはない。しかし、店員1人が相手なら、その店員が在籍していた店舗だけが特例だったようにごまかすこともできなくはない。しかし、これが量販店と量販店の合併で、商品マスターまで開示されてしまうと、どうあがいてもごまかしは不可能だ。
量販店の合併によって店舗が統廃合され、仕入れが一本化されることで効率化できるというのは、あくまでも量販店の側のメリットであり、メーカーにとっていいことはほとんどない。これまでなかった大口の商談が可能になるとはいっても、買い叩かれることによって実質的にはメーカーの利益は相殺されてしまう。メーカーにとって量販店の合併というのは、引っかき回される割に実入りがほとんどないという、実にありがたくないイベントであったりする。
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