いまあるハードウェアで、ちょっと先の未来へ:Research@Intel 2012(3/3 ページ)
Intelが米国で開催した「Research@Intel 2012」では、「暮らしに根ざしたソリューション」をテーマに、ITで生活をよくしていく具体的な提案を紹介した。
背後に立って画面を覗き込むあいつからプライバシーを守る
3つ目のデモも、内蔵カメラを使ったPCユーザー向けのソリューションだ。SNSやメールなど、ユーザーが自身のやり取りを見られたくない場面というのが存在する。そこで、マシン前の利用者の存在を常に内蔵カメラで監視し、画面のフレームからPCのオーナーが離れると、自動的に画面を隠す。離席時に画面をロックする仕組みはすでにあるが、よりリアルタイムで実現するのが特徴といえるだろう。また、フェイスロックで特定人物をつねに認識しているため、共用PCなどで瞬時にユーザー切り替えを行ったりなど、この技術も応用が利きそうだ。
サイネージに応用できそうなデモも多い。プロジェクターで凹凸のある屏風状のオブジェクトに映像を投影して、画面を綺麗に表示するデモでは、プロジェクターの投影方向やオブジェクトの形状にかかわらず、出力画像を自動的に補正して最適な形に表示するのがポイントとなる。すでに過去のR@Iでも紹介していたデモだが、そのときは、白い自動車のオブジェクトに好みのカラーリングやマーキングをプロジェクターで行うものだった。この技術を利用すれば、複雑な形状のオブジェクトをサイネージに使うときでも、専用のディスプレイを用意することなく、1つのプロジェクターから投影する出力データを変換するだけで対応できる。
もう1つはプロジェクターとモーションセンサーを組み合わせたもので、プロジェクターで投影した映像をタッチして操作できるというものだ。デモでは、画面の隅を使った2つの壁面に映像を投影したものだったが、これもインタラクティブなサイネージとして応用が期待できそうだ。なお、このデモにおいても、モーションセンサーはKinectを利用している。
最後は、人物認識を組み合わせたセキュリティシステムに近いが、スクリーンの前にユーザーが立つと、画面に大きくユーザーの予定表を表示させるシステムのデモを紹介していた。これは、カメラで人物を認識して、立つユーザーによって情報が変化する。画面の壁紙を見ると、家庭やオフィス向けの技術だが、これもサイネージなどに応用できる技術だ。通行人がサイネージに立つと、それに応じた情報を提供する仕組みなどだ。
なお、この認識技術にもKinectを用いている。これまで参加してきた技術イベントの展示で、これほどのKinectを一度に見たのは初めてで、むしろ、「なぜKinectを多用するのか」が気になるところだ。
以上、R@Iの展示内容から、比較的エンドユーザーに近いソリューションデモを中心に紹介した。その多くが、特別なハードウェアなど使わずに、現在市販している製品を使って新しいシステムを提案している。例えば、自動会議記録システムは、現在のノートPCで実現できるし、モーションセンサーもKinectを利用している。そこに+αの工夫を施すだけで、便利で少しだけ未来的な世界が体験できるのだ。
Intelは、近未来的で身近な技術紹介を重視していて、IDFでも最終日にあたる3日目の基調講演で、同社CTOのジャスティン・ラトナー氏による「同社の考える技術の未来」「技術で何が実現されるのか」というアイデアを紹介している。ラトナー氏は“LinkedIn”のプロフィールでも「My goal: reach the Singularity, the point at which human and machine intelligence cross, by 2028.」と記しており、2028年までにコンピュータによる知性と人間の知性が交差する未来(Singularity)を実現したいという。そんな、夢の一歩がR@Iにある。おそらくは、R@Iで発表したデモの一部は、2012年9月のIDFでも登場することになるだろう。
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