GPSやWi-Fiなしで屋内ナビを実現するには? Microsoftのユニークな試み:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」
スマホの高精度なナビ機能が屋内や地下でも使えたらいいのに……。そんな要望をシンプルな方法で解決する実験的なアプリをMicrosoftが提供している。
今やスマートフォンの地図アプリとナビゲーション機能さえあれば、知らない街でも迷わず目的地に行けるのが当たり前になった。こうした機能はGPSのような衛星を使った位置情報システムで実現されているが、残念ながらGPSの電波を受信しにくい屋内や地下では十分なナビゲーション機能を提供できていない。
そのため、屋内や地下にもナビゲーション機能をもたらすため、さまざまな技術が日夜開発され続けている。しかし、精度や使い勝手、ましてや普及の面ではまだまだというのが実際だ。
例えば、Wi-Fiに加えて、Bluetooth Beaconと呼ばれる省電力型Bluetooth(BLE)を使った補正システムなどが一部導入され、既に展示会や特定施設内でのスマホ向け案内アプリに利用されている。また蘭Philipsなどが開発したLED電灯システムを使って数cmレベルの誤差で位置を特定する技術がフランスにあるスーパーマーケットのCarrefourに導入されている例もある。
今回紹介するのは、そうした商用化技術の前段階にあたるナビゲーションアプリ。Microsoftの実験的なプロジェクトだが面白い試みだ。
スマホ内蔵センサーで屋内ナビを可能に
中国の北京に拠点を構えるMicrosoft Research Asiaは、「Path Guide」という内部プロジェクトから派生したAndroidアプリを公開して話題になっている。
このPath Guideは、ユニークな発想と方法で屋内ナビゲーションを行うアプリだ。簡潔に言うと、「ある人物が記録した移動軌跡を使って、他の人が同じ軌跡をたどることでナビゲーションが行えるアプリ」となる。一度誰かが訪れた場所ならば、次に訪れる人はその情報を利用して迷わず目的地まで移動できるわけだ。
技術的なポイントはスマホに内蔵されたセンサーのみを利用する点にある。Beacon設置などの特別なインフラ整備や、事前のキャリブレーション作業(電波強度測定など)を行わずとも、移動歩数や方向転換、階段や昇降装置による上下移動をスマホ内蔵のセンサーで計測して再現できるので、低コストで手軽な屋内ナビゲーションが可能になる。
移動の軌跡を記録して追跡できる仕組みでナビ実現
Path Guideを起動すると「記録」と「軌跡の追跡」のいずれかの機能が利用できる。
「記録」はアプリを起動して移動軌跡を記録する仕組みで、加速度センサーや地磁気センサー、方位センサーなどを組み合わせて、移動歩数やどちらの方向に転換したのかといった軌跡が自動記録される。気圧センサーを内蔵しているスマホでは上下の移動も感知できるため、階段や昇降装置などを使った移動も自動記録が可能だ。
音声や写真、テキストを注釈として適時加えられるので、迷いやすい場所では付加情報で後から軌跡をたどる人のガイドにできる。
記録した軌跡はPath Guideを使って共有でき、「軌跡の追跡」が行えるようになる。例えば、建物の入口から何歩歩いてどちらに曲がるか、といった案内が表示される。ナビゲーション時の自分の位置もスマホ内蔵センサーで計測する仕組みだ。
Path Guideはまだ実験的なプロジェクトの域を出ていないが、今後のフィードバックで改善が進み、iOSなどマルチプラットフォームに対応し、ユーザー数が増えていけば、手軽な屋内ナビゲーションとして導入が進むかもしれない。
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