Microsoftとタッグを組んだWalmart 対Amazonで譲れるものと譲れないもの:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)
米小売最大手のWalmartが米Microsoftと5年間の戦略的提携を結んだ。Microsoftのクラウド、AI、IoTサービスを全社で採用し、小売り分野でのデジタルイノベーションを加速するという。その背景にはもちろん米Amazon.comへの対抗があるわけだが、テクノロジーの全てをMicrosoftに委ねるわけではないようだ。
成長市場にシフトしつつあるWalmart
Walmartといえば6月12日(日本時間)に、日本の子会社である西友の売却に向けて大手小売や投資会社との交渉を進めていると日本経済新聞電子版が報じて話題となった。その後、Walmartはこれを否定するコメントを出したが、恐らく買収価格の交渉で折り合いがつかず、当面は安売りするよりは抱え込んでいた方がメリットがあると判断したのだと筆者は考えている。
Walmartにとっては、労働人口の減少で売上増が期待しにくい日本より、人口が増え続けて需要も期待できる中国や東南アジア方面にリソースを集中した方がいいと判断してもおかしくない。
実際、Walmartは世界での現地戦略を適時整理しており、最近は英国での活動母体だったスーパーマーケットのAsdaをライバルのSainsburyに売却した一方で、インドのEコマース事業者であるFlipkartをソフトバンクから株を買い取る形で買収するなど、成長市場にシフトしつつある様子がうかがえる。
2018年1月に米ニューヨークで開催された全米小売協会(National Retail Federation:NRF)の展示会「Retail's Big Show」にて、Walmartプレジデント兼CEOのダグ・マクミロン氏が世界戦略について興味深い話をしていた。
「先進国でも途上国でも、つまるところ“安価で便利に商品を購入したい”という欲求に違いはないというのは、世界展開の中で学んだことだ。先日中国のある家庭に滞在中、女性が折りたたみ携帯でSMSを送信したところ、配達人が3つのきれいなトマトを木製のリヤカーで運んできた場面に遭遇した。方法は違えど、その国や地域に適した形で、より便利で安価な手段で小売の世界が存在している」と同氏は語る。
重要なのは一元的な手段を広域展開するのではなく、その地域に根ざした戦略が存在するというのだろう。
ビル・ゲイツ vs. ジェフ・ベゾス
一方でスケールを武器に拡大を続けてきたAmazonだが、この先どのようにさらなる拡大を続けていくのだろうか。7月16日にスタートした同社の一大セールイベント「Prime Day」では、米国でサイトがダウンするといったトラブルに見舞われるほど盛況だったようだ。
CNBCによれば、Amazon.com(AMZN)の株価は7月16日に過去最高となる1841.95ドルを記録。同社株を持つジェフ・ベゾスCEOの手持ち資産が1500億ドルを突破し、歴史上最大の富豪となった。これは、1999年に米Microsoft共同創業者であるビル・ゲイツ氏が1000億ドル(現在の価値に変換して1490億ドル)に達した水準を上回るものだという。
ここでもMicrosoft vs. Amazonという象徴的な構図を描き出しているが、小売分野で拡大しつつある両社の勝負の行方はどこに向かうのだろうか。
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