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「iPhone伸び悩み」のなぜ ティム・クックCEOが語るITはみ出しコラム

米Appleの第1四半期(2018年10〜12月)決算は、2年3カ月ぶりの減収減益。原因となる「iPhoneの伸び悩み」について、ティム・クックCEOが説明しました。

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 米Appleが1月29日(現地時間)に発表した第1四半期(2018年10〜12月)決算が注目を集めています。2年3カ月ぶりの減収減益だったからです。売上高は前年同期比5%減の843億ドル、純利益は0.5%減の199億7000万ドル(1株当たり4.18ドル)でした。

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減収減益の原因は「iPhoneの伸び悩み」(写真はXR)

 今回からAppleは業績発表でハードウェア製品の販売台数を公表しなくなりました。ちょっと寂しい気もしますが、売上高は従来通り、製品カテゴリー別と地域別で発表しています。

 「販売台数は発表しない」というのは7〜9月期の業績発表のときに予告していました。それでもう、「ああ、やっぱりiPhoneがどんどん売れる時代は終わったんだなぁ」と思ったので、ティム・クックCEOが2019年1月頭に業績の下方修正を発表しても、それほど驚きませんでした。

 そして今回の決算発表は、それを裏付けるものでした。

Tim Cook
米Appleのティム・クックCEO

 カテゴリー別の売上高では、iPhoneの伸び悩みが目立ちます。MacもiPadもウェアラブル(Apple WatchやAirPods、身に付けるものじゃないけどApple TVやHomePodもここに入ります)も、そしてサービス(App Store、AppleCare、Apple Pay、Apple Music、ライセンスなど)も……、つまりiPhone以外は全部売上高が前年同期比プラスの中、主力のiPhoneだけがマイナスでした。感慨深いものがあります。

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カテゴリー別の売上高

 これと、地域別の売上高で中国が思い切りマイナス(-27%)になっているのを合わせて見ると、クック氏が下方修正を発表したときに「中国の経済環境は、米国との貿易面の緊張関係の高まりに影響を受けている」と強調したのがよく分かります。

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地域別の売上高

 地域別では、アメリカ以外が全部マイナスです。Apple好きが多い日本が5%マイナスというのはびっくり。でもそういえば、筆者の周囲でもかつてはiPhoneを毎年買い換えていた夫を含むガジェット好き3兄弟が、昨年の新モデルは誰も買っていません(ちなみにこの四半期の3兄弟の大きめなお買い物としては、長男はMacBook Airを、次男は新車を、三男は4Kテレビを買いました)。

 クック氏は業績発表後に行った電話会見の質疑応答で、iPhoneの不調は、為替の問題(米ドルが強すぎた)、日本を含む一部地域で補助金システムがなくなったこと、バッテリー交換プログラムの値下げでの実施も要因だと説明しました。

 為替の問題、というのは地域別売上高でアメリカのみがプラスなことの説明になっています。補助金問題は日本がマイナスな説明になります。クック氏は、電話会見で日本の補助金システムについてかなり細かく説明していました。

 バッテリー交換料金値下げの影響も確かに大きそうです。ガジェット好きではないiPhoneユーザーが買い換える理由は「新機能を使いたい」ではなく「バッテリーがへたった」か「調子悪い」だと思うので。先日ITに興味のない友人(フラメンコの先生)に新年会で久しぶりに会ったら「iPhone 6s」ユーザーで、バッテリー交換プログラムの存在すら知らず、昨年末に値下げ期間が終了したと知って悔しがっていました。

 クック氏からiPhone不調についての説明を引き出したのは、アナリストのスティーブ・ミルノビッチ氏でした。「iPhone新モデルの価格設定が高すぎたとみている人がいますが、価格弾力性(価格変更に対する需要の反応の尺度)について何か学びましたか」と質問したのです。

 これに対してクック氏は、「iPhone XS」は米国では先代に当たる「iPhone X」と同じだし、その上位モデルである「iPhone XS Max」はプラス100ドル、「iPhone XR」は「iPhone 8」と「iPhon 8 Plus」の中間だから、価格設定は前回とそれほど変わらない、と主張しました。だから米国では普通に売れたけど、為替のせいで他の地域では高くなってしまったのだ、とも説明しました。

 ミルノビッチ氏はもう一つグッジョブな質問をしていて、ルカ・マエストリCFO(最高財務責任者)からiPhone新モデルの10〜12月期の販売台数ランキングを聞き出してくれました。XR、XS Max、XSの順だそうです。

 XSとXS Maxは前四半期中の9月21日発売、XRは10月26日発売なので、単純には比較できませんが、XSよりXS Maxの方が売れているのは意外です。ITmedia Mobileが毎週記事を掲載している日本のスマートフォン販売ランキングでは、ずっとXR、XS、XS Maxの順になっているので。ちなみに、新モデル発売後もずっとiPhone 8がトップで、Xや6sがXRより上位の週もあります。

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iPhone新モデルのラインアップ

 iPhoneの不調を受けて、Appleはどうするのでしょうか。クック氏は「下取りプログラムや分割払いなど、いろいろ対策を講じているから、それほど心配していない」と言いました。

 日本でも今、「2月28日までにお近くのApple Storeで対象となるあなたのiPhoneを下取りに出すと、iPhone XRの購入価格が実質5万9800円(税別)から、iPhone XSの購入価格が実質8万7800円(税別)からになります」というキャンペーンをやっています。

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日本でのキャンペーン

 それに、Apple自身も強調しているように、サービスのカテゴリーは順調に伸びているのです(売上高でiPhoneは14%減ですが、サービスは19%増)。SamsungのスマートTVでiTunesアプリを提供したり、月額制のゲームサービス立ち上げのうわさがあったりもします。

 Microsoftがいつの間にかWindowsとOfficeのメーカーからクラウド企業になったように、Appleでもそのうち、「iPhoneは主力のサービスを使ってもらうための手段の1つ」という位置付けになっていくのかもしれません。

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