Appleは「iPhoneの価値」をさらに高められるか 新サービス発表の狙い:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
サンフランシスコで行われた米Appleの新サービス発表会を現地で取材。この発表が何を意味するのかについて考察する。
「顧客価値とは何か」を再考するApple
このように今回の発表は、「顧客価値とは何か」を再確認する場だった。誰もが知る著名な監督や俳優たちの華やかさに圧倒されがちだ。しかし、最も評価すべき部分はデバイスの進化速度が遅くなってきたとき、顧客価値を高めるためにコンテンツに目を向けたところだと思う。
スマートフォンだけでなく、現代の機器はほとんどがインターネットと接続され、機能の面でもネットへと依存している。性能や機能ではなく、顧客が何を価値として感じるかを見直したとき、Appleはサービスやコンテンツの側もハードウェアと同様に質を高めていく必要があると判断したのだろう。
ただし過去において、日本市場と英語圏ではサービスの質に違いがあったことは指摘しておかねばならない。
例えば米国でのApple Musicは、キュレーターによるプレイリストの量も多いが、同じプレイリスト内の曲の入れ替え頻度も高く、メンテナンス頻度も高い。日本の場合、アニメソングなど一部、日本ならではのプレイリストはメンテナンス頻度が高いものの、それ以外は見劣りする。
また、動画サービスは極めてドメスティックな要素が強いため、キュレーションを行おうにも米国ほどにはストリーミングサービスが充実していない実情もある。Apple TV+の価値は変わらないものの、NetflixやAmazonプライム・ビデオが日本をはじめドメスティックなコンテンツにも投資をしていることを考えれば、Appleにも同様の対応を求めたい。
デバイスを購入してくれる顧客に対し、特別な価値を提供しようとするAppleの姿勢は大いに評価したいところだが、ゲームに関しては150を超える国と地域、映像サービスに関しては100を超える国と地域に向けてサービスされるというから、そこには日本も含まれることだろう。
ならばこそ、また日本語という特殊な環境にあればこそ、Appleには端末シェアの高い日本の顧客に対して、最大限の顧客価値を提供する努力を望みたい。
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