Googleが目指す「アンビエントコンピューティング」 Pixel 4はその一部に:ITはみ出しコラム
今年4回目となるGoogleのイベント「Made by Google」は、ハードウェア発表会というよりも、ハードウェアとサービスで目指す「アンビエントコンピューティング(ambient computing)」についての説明会という印象でした。
Apple、Microsoft、Amazon、Googleのハードウェア発表イベントラッシュも終わり、すっかり涼しくなって街にはオレンジっぽいハロウィンのデコレーションが増えてきました。Googleが10月15日に発表した「Pixel 4」の新色「Oh So Orange」はハロウィンに似合いそうです。
今年で4回目になるハードウェア発表イベント「Made by Google」は、ハードウェア発表イベントというよりも、Googleがハードウェアとサービスで目指す「アンビエントコンピューティング(ambient computing)」についての説明会という感じでした。
分かりやすいことに、イベントのまとめ役だったリック・オステルロー氏の肩書が、昨年の「ハードウェア担当上級副社長」から変わって、今年は「デバイス&サービス担当上級副社長」になっていました。
この人が、HTCから買収したPixelチームとAlphabet傘下だったスマートホーム部門のNestをまとめ、さらにゲームストリーミングサービスのStadiaもひっくるめて全部面倒を見ています。
イベントを見ている方としては「早くPixel 4、出てこないかなぁ」と思っているのに、リックさんはしばらくアンビエントコンピューティングについて話しました。
アンビエントは「環境」という意味。アンビエントコンピューティングとは、ざっくりいうと個々の端末などを意識せずに、環境全体をコンピュータのように操作できること。ユーザーが必要とするとき、テクノロジーは背景に隠れているべきで「デバイスはシステムの中心ではない」とリックさんは言いました。
「今年のMade by Google製品は、あなたの日常生活を邪魔することなく、あなたの日常生活に役立つように設計されています」(公式ブログより)
今回発表されたハードウェアの中で、一番アンビエントコンピューティングに貢献しそうなのは無線イヤフォンの「Pixel Buds」だと思いました。特に、同時通訳機能は未来っぽい(先代でもできましたが、無線になった分さらに)。来年日本でも発売されるそうなので、楽しみです。
アンビエントコンピューティングという言葉は特に新しいものではなく、ぐぐったところ最初に論文で言及したのは1993年のゼロックスパロアルト研究所の研究者(当時)、ピエール・ウェルナーさんのようです。その段階ではまだビジョンでしたが、テクノロジーが追い付いてきて、実現できそうになっているわけです。
Amazonが目指している「おはようからおやすみまで」Alexaを溶け込ませようという世界も、この用語こそ使っていませんが、アンビエントコンピューティングです。
2017年にご隠居宣言したガジェット大好きジャーナリストのウォルト・モスバーグさんが米The Vergeで最後に書いたコラムで、アンビエントコンピューティングについて分かりやすく説明してくれています。彼は、「アンビエントコンピューティングは10年以内に実現しはじめ、20年以内に整う」と予想しました。「ガジェット愛好家としてはとても悲しいが、テクノロジー信奉者としては楽しみだ」とのこと。
ハードウェアを意識しなくて済むようになってしまったら、確かに新しいスマホにわくわくしたりすることもなくなりそうです。
ウェイクワードもなしに、独り言のように「お腹すいたなー」と言うと、どこからか「いつものハンバーガーを注文しましょうか?」と言われて、しばらくするとハンバーガーが届いたりして。体内にセンサーチップを埋め込めるようになったら、言葉を発さなくても、イライラすると静かな音楽が流れたり、体温が下がるとエアコンの温度が上がったりするかもしれません。
便利な半面、プライバシーや安定性が心配です。
プライバシーについては、イベントでも再三、「データは端末側に保存するから大丈夫」とアピールしていました。
安定性はどうでしょう。今でも停電になっただけでパニクります。アンビエントコンピューティングで意識せずに使える便利なことの数々が突然使えなくなったときのギャップはすごそうです。
生まれたときからアンビエントコンピューティングに囲まれて育つ子どもには、「いざというときのための原始的な生活の教育をしなくちゃ」などと心配してしまいますが、私もモスバーグさんのように、楽しみではあります。
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