使って分かったM4チップ搭載「iPad Pro」のパワフルさ 処理性能とApple Pencil Pro/Ultra Retina XDRディスプレイ/新Magic Keyboardを冷静に評価する:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)
Appleが5月15日に発売する新しい「iPad Pro」は、想像以上にパワフルだ。しかし、用途によっては「iPad Air」でもいいかもしれない――iPad Proを中心に、実機に触れつつレビューしていこう。
新型の「iPad Pro」「iPad Air」は、いずれも近年では最も大きなアップデートになった。特にiPad Proに関しては、2018年のモデルチェンジを行って以来となるビッグチェンジといえる。iPad Airについては、SoCがM1チップからM2チップに切り替わっただけでなく、より大画面の13インチモデルが加わり、汎用(はんよう)的な使い方を広くカバーできる製品となった。
加えて、今回のiPadシリーズのアップデートでは、その周辺機器である「Apple Pencil Pro」も、従来のApple Pencil比で進歩を遂げたのだが、iPad Pro/Air“そのもの”に目をうばわれてしまうせいか、大きな話題になっていないように思える。
この記事ではAppleから新しい「13インチiPad Pro」と、新しい13インチiPad Pro用の「Magic Keyboard」、そしてApple Pencil Proからなるレビューキットをお借りして、その“真価”を確かめていきたい。
目立たないように見えて大きな進化を遂げた「Apple Pencil Pro」
iPad Proを愛用しているクリエイターの多くが、Apple Pencilを愛用している。そのことを考えれば、Apple Pencil Proがより忠実かつ複雑な表現(ニュアンス)を伝える能力を備えたことは、極めて大きな意味を持つ。
残念なことに、Apple Pencil Proは新しいiPad Pro/Air以外では使えない。このため、このペンを使うかどうかは「本体を買い換えるかどうか」という議論に直結してしまいがちなのだが、クリエイターにとってはApple Pencil Proを使いたいから新しいiPad Pro(iPad Air)に買い換えるという判断をしてもおかしくない。
このApple Pencil Proは、従来の「Apple Pencil(第2世代)」と重量バランスをそろえて素晴らしい使い心地を維持しつつ、新しいクリエイションの切り口を与えてもいる。
従来のiPad Proで使えた「Apple Pencil(第2世代)」(左)と、Apple Pencil Pro(右)の実測重量は1gしかない。手に持った際の重量バランスもそろえられているので、目を隠して「さあ、どっちがどっち?」とやっても、よほどのことがなければ気が付かないかもしれない
ペンを回転させる「バレルロール」という操作は、その回転による効果を最も想像のしやすい。実際、平筆を回転させながら描写したり、ペン先を回転させながら幅をコントロールしたりして美しい筆致を再現させる「カリグラフィー」の技術を、電子的に再現できている。
しかし、そうした既存のツールを模倣した操作だけが、このApple Pencil Proの“価値”ではない。回転させることによって生み出される新たな操作性を、デジタルツールに還元し、これまでにない創作の手法を生み出せるのだ。
例えば3Dモデリングアプリを想像してみてほしい。筆者がデモンストレーションで見たアプリでは、3Dモデルに対してApple Pencil Proでアプローチし、回転させながら“ひねって”形状を編集する(変える)操作を目撃した。
一昔前、3Dモデリングといえばハードルの高い世界だった。しかし「Blender」がそのハードルを下げた結果、今ではアマチュアクリエイターもカジュアルにトライできるようになった。Apple Pencil Proを用いた3Dモデリング編集が一般的になれば、その操作が一般化し、より多くの人が3Dモデルや空間シーン編集の世界に参入できるようになるだろう。
筆者はイギリス・ロンドンでの現地取材でApple Pencil Proに対応するさまざまなアプリを体験できた。一部、それには筆者が使っているアプリも含まれていたのだが、レビュー時点では対応バージョンを入手することができなかった。ゆえに、今回はこのペンの“深掘り”はできないが、まずApple Pencil Proこそが、今回のiPadシリーズのアップデートにおける大きなテーマだったということは伝えておきたい。
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