AMDの新CPUアーキテクチャ「Zen 5」の採用でRyzen 9000/Ryzen AI 300は強くなった? 特徴や変更点を解説(4/4 ページ)
AMDのデスクトップ向けCPU「Ryzen 9000シリーズ」とモバイル向けAPU「Ryzen AI 300シリーズ」では、新しい「Zen 5アーキテクチャ」のCPUコアが採用されている。同アーキテクチャの特徴をかいつまんで紹介していこう。
Pコアだけど高効率!? 「Zen 5c」の果たす役割
CPU市場におけるAMDのライバルであるIntelは、CPUコアについてピーク性能重視の「高性能コア(Pコア)」と、電力効率重視の「高効率コア(Eコア)」を混載するアーキテクチャを採用している。
それに対してAMDはEコアの搭載を極度に嫌っている。Intelへの対抗もあってか、ここ最近の新CPUの説明会では「AMDのCPUは全部Pコア!」なんていうアピールをすることも珍しくない。
そんな中、Ryzen AI 300シリーズに搭載されているZen 5cのCPUコアは、IntelでいうところのEコアに近い存在といえる(AMDは『Eコア』と言ってほしくないだろうが、Zen 5と比べたらEコア的な立ち位置なので便宜上こう呼ぶ)。
先述の通り、Zen 5cは「コンパクトなZen 5」だ。マイクロアーキテクチャは同一で、ピーク時のIPC(クロック当たりの実行命令数)も同等だという。「では何が違うの?」というポイントだが、一番大きいのはL3キャッシュの構成の違いだ。
Ryzen AI 300シリーズの場合、Zen 5コアには最大4基、Zen 5コアには最大8基のCPUコアが搭載される。Zen 5コアでは4基のCPUコアが16MBのL3キャッシュを共有する。それに対して、Zen 5cコアでは8基のCPUコアで8MB(6基の場合は6MB)のL3キャッシュを共有している。要するに、Zen 5では「1コア当たり4MB」、Zen 5cでは「1コア当たり1MB」のL3キャッシュを用意しているということになる。
加えて、Zen 5cのCPUコアはZen 5と比べて30%ほど小型化されおり、ピーク動作クロックも低く抑えているという。L3キャッシュの容量削減と併せて考えると、全部Zen 5のコアにするよりも電力効率は高いといえそうだ。
ちなみに、競合のIntelはモバイル向けの次世代Coreプロセッサ(開発コード名:Lunar Lake)のPコアにおいて、マルチスレッド動作を“無効”とする決断を行ったが(参考記事)、AMDではクライアント向けCPUにおけるマルチスレッド対応を今後も続けるという。
2024年末に向けてCPU戦線が熱くなりそう!?
Ryzen 9000シリーズの直接のライバルは、Intelが2024年後半に投入を予定するデスクトップ向けCore Ultraプロセッサ(Arrow Lake)となるだろう。デスクトップPCやゲーミングPCの新調を考えている皆さんは、この両者が出そろってから選んでも遅くはない。
一方、Ryzen AI 300シリーズのライバルは、次期Core Ultraプロセッサ(Lunar Lake)と現行のCore Ultraプロセッサ(シリーズ1)になりそうだ。次期Core UltraプロセッサのNPU性能はRyzen AI 300シリーズと拮抗(きっこう)するものの、ターゲットが「リアルモバイル」なので、直接競合するかというと、そうでもなさそうである。
GPU性能が圧倒的に優れるRyzen AI 300シリーズは、携帯型ゲーミングUMPCへの採用で盛り上がりそうだ。
ともあれ、2024年末はCPU回りの戦いが“熱く”なるだろう。
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