ノジマ傘下入りが決まった「VAIO」の物作りはどうなる? 安曇野の本社工場を見学して分かったこと(3/6 ページ)
2025年1月からノジマグループに参画することが決まったVAIO。ノジマの傘下に入ることで、VAIOの“物作り”はどうなるのだろうか。ノジマグループ入りが発表された直後のVAIO本社を訪れ、工場を見学した感想を交えて考察する。
「VAIO SX14-R」の組み立て工程
最新モデルであるVAIO SX14-Rの組み立て工程では、「LCD(液晶ディスプレイ)部」と、さまざまな部品を実装する「キーボード部」でラインを別々に用意している。最終的に、両ラインからできあがってきたものを組み合わせて“完成”という構成だ。
ちなみに、従来モデルの「VAIO SX12」「VAIO SX14」では、LCD部、キーボード部に加えて「ベース部」の計3つで組み立てラインを組成していた。今回のVAIO SX14-Rはベース部に組み付ける部品がなくなったため、工程としては省かれている(後で組み上がった本体に取り付けるだけで済む)。
ブラック基調となった生産ライン
VAIO SX14-Rの生産は量産試作を経て、10月21日から本格的な量産を開始しているという。この生産ラインで目を引くのは、工程全体がブラック基調となっていることだ。VAIO SX12/14のラインではシルバーの器具を使っていたのに対して、ブラックの器具を使うようになり、工程全体で“プレミアム感”が演出されている。
実はこれには狙いがある。VAIOはここ数年、法人向けビジネスを強化している。それに伴い、「安曇野にある本社工場を見学したい」という企業が増加しているのだという。今回の取材は11月11日の週に行ったのだが、この週は毎日、企業の見学があったそうだ。企業がPCの一括導入を検討する際に、工場の生産ラインを見学した上で、そのこだわりを知り、導入を決定するというケースも少なくないという。
「完成した製品そのものは品質が高く、きれいであるのは当然だ。しかし、それだけでなく、整然とし、きれいで、カッコイイ生産ラインで、PCが作られていることも訴求したいと考えた。VAIOは、生産ラインも製品の一部であると捉えている」と、工場の担当者は狙いを語る。
VAIOは「カッコイイ」「カシコイ」「ホンモノ」を商品理念に掲げる。これを生産ラインにもそのまま適用しているというわけだ。
ちなみに、最初に生産ラインにブラックの器具を導入し始めたのは、2022年の「VAIO Z」だ。この6月から生産を開始したVAIO Vision+の生産ラインにも、ブラックの器具を用いている。今後、安曇野の本社工場の生産ラインは順次ブラック基調にしていくそうだ。
LCD部の組み立てラインでは、6月から生産をしているVAIO Vision+で採用した新たな組み立て方法の経験を生かしているという。新たなカーボンファイバー素材の取り扱いやパネルの圧着作業、薄いベゼルの取り付けなど、約4カ月に渡って先行した経験がVAIO SX14-Rに生かされているのだ。
また、安曇野工場の特徴といえるのが、安曇野FINISHである。技術者が1台ずつ組み上げたPCを、人手による目視や官能試験、自動検査などにより、120項目以上の品質をチェック。「いいものを作って届けたい」という生産ラインの思いが、安曇野FINISHを支えているという。
ここからは、ラインごとに生産の様子を見てみよう。
LCD部のライン
VAIO SX14-Rでは、ヒンジ部に曲線を用いたオーナメントデザインを採用している。その貼り付けは熟練工が担当しており、ピンセットを使ってアンテナケーブルなどをはわせた後にカメラで撮影して検査を行う。写真は、その後の液晶パネルの取り付け工程の様子だ(作業者は液晶パネルを置くだけで正しい位置に取り付けできる)
キーボード部のライン(LCD部との組み合わせも)
組み立て工程における検査
完成した本体は、カートに載せられて完成後検査の工程に回される。このカートにはモバイルバッテリーが取り付けられていて、検査用のソフトウェアは移動中にインストールされるようになっている。完成後検査の時間短縮のための工夫とのことだ
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Core Ultra(シリーズ1)を搭載した「VAIO SX14-R」「VAIO Pro PK-R」が11月8日登場 最軽量構成は1kg切りで新色も用意
VAIOがCore Ultraプロセッサ(シリーズ1)を搭載する14型モバイルノートPCのフラグシップモデルを投入する。NPUを搭載することでWeb会議などをより快適にこなせることが特徴だ。
10年間“卒業”できなかったVAIOがノジマ傘下に入る理由
VAIOがノジマに買収される――PC業界で大きな話題になっている。ソニーからスピンオフしたPCメーカーはなぜ、家電量販店のグループ企業になるのだろうか。その理由を解説していく。
ノジマが約112億円でVAIOを子会社化 2025年1月6日付で(予定)
家電量販店のノジマが、VAIOを買収することになった。日本産業パートナーズ(JIP)傘下の持ち株会社を買収した上で、JIP傘下のファンドからもVAIO株式を取得することで約93%の株式を保有することになる。
「VAIO Vision+ 14」は異次元の軽さだった! VAIO入魂の新型モバイルディスプレイを試す
モバイルディスプレイの普及が進んでいるが、ついにVAIOからも初の製品が登場した。公称重量約325gの意欲作「VAIO Vision+ 14」を細かく見ていこう。
「100万人に喜んでもらえるVAIO」に挑戦しよう! VAIOを触ったことがないのに社長になった山野氏のこだわり
コロナの5類感染症変更など、世の中の環境、経済状況や社会情勢が激変する昨今。急激な円安に伴う物価の上昇が続く中で、IT企業はどのような手を打っていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載の第5回はVAIOだ。



















