Apple Intelligenceは「Copilot+ PC」や「Federated Learning」とは何が違う? 今後、デジタルデバイスの刷新が進むと考える理由:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)
AppleのAIプラットフォーム「Apple Intelligence」が、まもなく日本語を含む多言語対応を開始する。それを前に、Apple Intelligenceの“真価”を改めてチェックしたい。
Appleが2024年6月に満を持して発表した独自のAIプラットフォーム「Apple Intelligence」が、4月初旬から日本語を含む多言語対応を開始する予定だ。このプラットフォームはApple製品の価値を高めるものだが、AIとプライバシーの関係性について業界全体に一石を投じ、新たなトレンドを生み出すものになるだろう。
「ChatGPT」や「Claude」、あるいは「Gemini」といった大規模言語モデル(LLM)を活用したチャットサービスの台頭により、AIは急速に私たちの日常生活や仕事の中に浸透しはじめている。Apple IntelligenceもこのようなAI技術の進歩を応用したものだが、その実装の方法は既存のサービスから一線を画している。
もう少し具体的にいうと、AppleはiPhone/iPad/Macといった既存デバイスの機能を内側から強化する、いわば「ハードウェアプラットフォーム統合型AI」を志向している。メールやカレンダーなどの情報に対する処理だけでいうなら、Googleが「Google Workspace」に組み込み始めたGeminiを応用した機能と同じように見える。しかし、Appleは「ハードウェアとソフトウェアの深い統合」という自社の強みを生かした展開で違いを出そうとしているのだ。
自社設計のチップからOSまで一貫して手掛けるAppleだからこそ実現できる、端末内AIとクラウドAIの最適な連携――そんなApple Intelligenceの“本質”について、もう少し深掘りしていこう。
「オンデバイス処理」がもたらす、個人に寄り添うAI機能
現代人のデジタルライフを見渡せば、PCやスマートフォン、タブレットといったデバイスには電子メール/SMS/SNSなどさまざまなコミュニケーションデータが日々蓄積されている。加えて、個人のスケジュール、位置情報、健康データや写真といった極めてプライベートな情報も集約されている。これらのデバイスは、もはや私たちの生活や思考、履歴をたたえた“外部記憶”といっても過言ではない。
Apple Intelligenceの最大の差別化ポイントは、このような「個人の行動に最も近い位置にあるデバイス」に保管されたパーソナルデータやコミュニケーションの履歴を通じて、最適な情報とアドバイスをもたらすことにある。一般的なAIサービスが「あなたの質問に、一般的な知識から答える」のに対し、Apple Intelligenceは「あなたの日常や仕事の内容を知った上で、必要な情報を提供する」のが大きな違いだ。
例えばメールの要約/返信支援では、大量の受信メールをAIが要約し、メール一覧のプレビューだけでも内容を把握できるようにしたり、優先度の高いと識別したメッセージを教えてくれたり、返信の下書きを指定したトーンで清書してくれたり、何度もやり取りの往復があった商談メールを要約したりといった機能を提供する。
スケジュール連携機能では、メッセージやメールから「約束事」を自動的に検出し、カレンダーへの登録を提案してくれる。「午前中は外出して、午後に資料作りを始める」といった自然な表現からでも予定を推測し、適切なタイミングでリマインドしてくれる。
画像生成機能においても、「写真」アプリ内で識別された特定個人の写真を元にしたイラスト生成などが行える。
Apple Intelligenceは、提供が始まってそれほど時間がたっていない。ゆえに「デバイス全体を俯瞰(ふかん)して、特定の連絡先との間で交わされた最新の会議の約束内容を見つけ出す」といったところまでは到達はしていないようだ。
しかし、Appleが目指しているのは、個人の活動や生活に寄り添ったプライベートなアドバイスを行うAIである。そこに向けて歩みが始まったことに、大きな意味があるといえよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
“後出し”の生成AI「Apple Intelligence」がAppleの製品力を高める理由
生成AIにおいて出遅れを指摘されているAppleが、開発者向けイベントに合わせて「Apple Intelligence」を発表した。数ある生成AIとは異なり、あくまでも「Apple製品を使いやすくする」というアプローチが特徴だ。
“暖かみのある会話”を実現――OpenAIの新言語モデル「GPT-4.5」は何が変わったのか?
OpenAIの新言語モデル「GPT-4.5」のリサーチプレビュー版をリリースした。従来の「GPT-4」と何が変わったのか、実際に試しつつ解説する。【更新】
ホテル予約、買い物──AIがWebサイトを人間のように操作する「Operator」は、AGI(汎用人工知能)への大きなステップだ 実際に試してみた
本記事では、Operatorの技術的背景と特徴、さらに実際に使ってみての可能性など考えてみることにしよう。
OpenAIのサム・アルトマンCEOが日本で語った「ChatGPT」の未来像 「あと10年で世界は激変する」の真意
ソフトバンクグループとの合弁会社立ち上げに合わせて、OpenAIのサム・アルトマンCEOが来日した。東京大学でのイベントにサプライズ登壇した同CEOから話を聞くことができたので、その時の話題をまとめる。
なぜ“まだ使えない”Apple Intelligenceを推すのか? 新製品から見えるAppleの狙い
Appleが、毎年恒例の9月のスペシャルイベントを開催した。順当に発表された新型iPhoneでは、生成AIを生かした「Apple Intelligence」が推されてるのだが、当のApple Intelligenceは発売時に使うことはできない。なぜ、発売当初に使えない機能を推すのだろうか。新製品の狙いを見ていこう。



