米Microsoftはなぜ最大6万人に早期退職を打診するのか? 決算資料から読み解く巨額AI投資の“台所事情”:Windowsフロントライン(3/3 ページ)
米Microsoftが、従業員の4人に1人に相当する最大6万人を対象とした早期退職プログラムを発表した。不調のゲームやPC部門だけでなく、売り出し中のAI部門までもが対象に含まれている。直後に発表された2027年度第1四半期決算の「Azure」と「CapEx」の数字から、その背景を読み解く。
巨額の設備投資が行き着く先
Azureの話が一段落したところで、話題をCapExに移そう。
Microsoftの過去のCapExの推移をまとめたサイトを見ると、FY2024(2023年7月〜2024年6月期)あたりから急カーブを描いていることが分かる。2020年代前半は200億ドル規模に収まっていたことを考えれば、驚異的な伸びだ。
FY2026(2025年7月〜2026年6月期)のCapExは約1159億ドルだった。決算発表でのMicrosoft CFO(最高財務責任者)のエイミー・フッド(Amy Hood)氏の発言によれば、FY2027 Q2(2026年10〜12月期)のガイダンスでは“ファイナンスリース”込みで500億ドル以上のCapExを想定しており、CY2026(2026年暦年)では1700億ドル規模を見込んでいるという。
期間が半年ずれるものの、FY2026とCY2026の比較で540億ドル近く増えていることになり、それだけ設備投資の負担が膨らんでいることを意味する。
この増加分は、ほぼ全てがAzureのAIデータセンター投資に回されている。
「土地や建物(長期資産)」や「サーバやGPU(短期資産)」を購入する資金がCapExとして投じられる一方、他のサードパーティー事業者のクラウドインフラをリース契約で利用するケースも出てきており、MicrosoftではこれをファイナンスリースとしてCapExの勘定項目に組み込んでいる。
このファイナンスリースを含めたCapExが重要なのは、ここ数年で急増した設備投資額が、そのままAIデータセンターのキャパシティー増加につながっている点にある。
AIデータセンターに大規模投資を行う「ハイパースケーラー」と呼ばれるビッグテック各社の間でこの金額を比較すれば、各社のAIキャパシティーがどれだけ増えているかを見通せるわけだ。
金額面ではAmazon(AWS)やGoogleの後塵(こうじん)を若干拝しているものの、AI分野への集中投資を行った結果、実際のAIキャパシティーではほぼ並ぶ(あるいはリードする)水準にある。それが現在のMicrosoftのポジションだ。
問題は、これだけの投資が実需に見合っているかという点だ。
前述のフッド氏は「顧客の需要は依然としてわれわれの供給能力を上回っている」と述べており、むしろGPU供給の遅れが現在のボトルネックになっていると指摘する。
また、Microsoft CEOのサティア・ナデラ氏は、エンタープライズITは短期的な成果ではなく10年単位で見極める必要があるとクギを刺しており、目先の数字にばかり注目が集まる現状に苦言を呈している。
とはいえ、同社はFY2027から長期資産(土地建物)の減価償却期間を従来の15年から25年に延長している。これにより単年度で計上される減価償却費が圧縮され、会計上の利益率の改善が見込める。加えて、この会計方針の変更でCapExにおけるリースの分類が変わり、実際の支出額に比べてCapExの見込み額が小さく見えるようになる。
巨額投資の負担を会計処理の変更で何とか軽く見せようと腐心している様子からは、台所事情にそこまで余裕がないというのが実情だとみられる。
この巨額投資は大きなリスクを抱えている。AI需要が今後も伸び続けることを前提にした設備投資であり、もしAI需要の成長ペースが鈍化すれば、先送りした減価償却費なども含めて将来に大きな負担を背負うことになる。
それでも巨額投資をある程度続けなければ、ハイパースケーラー同士のチキンレースから早々に脱落してしまうため、手を引くことも難しい。すぐに会社が傾くような状況ではないものの、ギリギリの判断で投資を進めているのが実情だろう。
今後も続く競争を生き残るべく、最大の負担となる固定費を今のうちに圧縮しておく――冒頭で紹介したVEOによる大規模な人員削減は、それを見越した動きというわけだ。
こういったMicrosoftの徹底した固定費削減策を象徴するのが、長年にわたって対外的な“Microsoftの顔”として機能してきた施設の相次ぐ閉鎖だ。
1月には社員向け図書館「Microsoft Library」が、2月にはVisitor Centerが閉鎖された。さらに10月には、Microsoftに新風を吹き込むべく整備された社内メーカースペース「The Garage」も閉鎖されるなど、容赦なく終了が続いている。
これで削減できる固定費は、巨額のCapExに比べれば微々たるものだろう。しかし、聖域は存在しないことを社内外にあえて示すことで、今回のVEOの本気度を社員に自覚させる狙いがあるのかもしれない。
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