IT仕事塾

ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る
第2回 旅行サイト「旅の素」はヒューマンオペレーターの的確な応対を支援する(2/4)

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サイトを立ち上げるまで

 では、「旅の素」のスタートからひもといてみましょう。「旅の素」がサイトオープンしたのが、2001年の12月。その1年前からシステムの構築が始まったといいます。ファイルメーカーProを使うことに決めたのは、もともと個人的にこのデータベースソフトを使っていたという梅田氏。ホテル情報のデータベース、ホテルの部屋を販売する顧客情報のデータベース、そして顧客の予約履歴のデータベースを作っていくことは決まりました。そして、それぞれのデータベースのシステムはファイルメーカーProを使って作成し、入力を進めていったのです。開発者、担当者はみるみるスキルがあがっていき、使っていくにつれてファイルメーカーProを気に入ったといいます。


手あかにまみれ、使い込まれたファイルメーカーPro 関数・スクリプト事典。ファイルメーカーProプログラマーにとっては必携の品だ

 システムの仕組みを作ることとデータの入力を並行して進めていったわけですが、完成まではおよそ1年を要しました。そのあいだには少し苦労がありました。まず「旅行」ということに不馴れなスタッフが作っていたため、あとで仕様の変更があったりします。また、いくつものデータベースファイルを関連づける、リレーション機能を使うため、このフィールドと、どのファイルのどのフィールドが関連しているのか、わけがわからなくなることもあったといいます。もっともこれらは、ファイルメーカー特有のカスタマイズ機能と使いやすさですんなり解決したそうです。

 最終的にウェブでホテル情報を公開するにあたり、ファイルメーカーProで作ったシステムをウェブで公開するのに適したサーバソフト、ファイルメーカーPro Unlimitedの存在を知り、「まず、ファイルメーカーでやってみようか」ということでスタートしました。最初はウェブでの公開にファイルメーカーProを使う予定はなかったそうですが、「いけそうだ」というので、公開に踏み切ったといいます。

 サイトは順調にアクセスを増やしていきましたが、規模が拡大するにつれ、心配な面もでてきました。顧客の情報と公開用のホテルデータベースとを連動させた場合に、セキュリティの心配があるという点と、規模を拡大した場合、ウェブを置いているホスティング会社が、ファイルメーカーProに対応していないという2点です。セキュリティについては、ファイルメーカーPro固有の問題ではないのですが、公開用と内部用のデータベースを完全に切り離すことで解決できました。規模の拡大に伴うトラフィック増への対応については、一部の公開用データベースをホスティングすることで対処しました。この結果、ホテルの公開データベースに関しては、Silicon Graphicsのサーバマシンに対応したUNIX OSの一種であるIRIXと、リレーショナルデータベースであるMySQL、ウェブサーバとしてはApacheという組み合わせを併用することになったわけです。

「最終的にSQLベースのシステムを使うのならば、それで最初から組んだほうがいいのでは」という疑問が起きますが、秋葉氏は、「公開にそのまま使わなくても、マスターのデータベースを作るのには適している」と言います。「マスターは、まずファイルメーカーProで作ります。一からSQLで組むと、あとで仕様の変更が生じたときに大変になります。ファイルメーカーProであれば、業務的な流れをある程度わかっている人であれば、まったくファイルメーカーProを知らなくても、組めると思います」と秋葉氏。「Accessと比べても使いやすさが優れていて、カスタマイズが非常にしやすいですね」と、前回のレポートと同様の感想が出ました。

 実は、「旅の素」の強さは、ウェブサイトそのものにあるのではなく、コンタクトセンターにあるのです。利用者がウェブを見て、「旅の素」のコンタクトセンターにアクセスすると、受け付けたオペレーターが細やかな対応をする、その部分がこの旅行サイトの大きな特徴となっています。たとえば、利用者が指定した駅の宿泊施設が満室だった場合、となりの駅の検索をする、といったことは限られたウェブのインタフェースではなかなか実現できません。そこをスタッフが補い、できるだけ利用者の要望に応えます。そのためにウェブに公開されていないフルの情報や、顧客の過去の履歴などを駆使して、最適な対応を行っていくわけです。

 ですから、「旅の素」にとっては内部データベースが特に重要なのです。

[松尾公也, ITmedia ]

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