WiMAXは2009年が離陸の年――普及に自信を見せるWiMAX陣営:ITU Telecom World 2009
“WiMAXは転換点を通過した”――。ITU Telecom World 2009で会見を開いたWiMAX Forumは、こう宣言する。ユーザーがWiMAX搭載製品を見つけやすくするための「Retail Readiness Program」を展開することも明らかにした。
10月6日、WiMAX Forumがスイス・ジュネーブで開催中のイベント「ITU Telecom World 2009」で会見を開き、WiMAXの現状について説明した。2009年に入りWiMAXは、日本のUQコミュニケーションズやロシアのYotaらがサービスを開始するなど勢いづいており、WiMAX Forumは“WiMAXは転換点を通過した”と宣言した。
WiMAX Forum会長のロン・レスニック(Ron Resnick)氏は、WiMAXが現在「145カ国500のネットワークで実装されている」と自信を見せる。WiMAX関連機器は300以上の製品が市場に投入され、180製品が開発中だとし、来年にもエコシステムの確立を目指した「Retail Readiness Program」を展開する計画であることを明らかにした。これはノートPCやネットブック、携帯電話などのWiMAXに対応した認定製品を、消費者が容易に小売店で選択できるようにするプログラム。「3Gが登場して何年も経つのに、3Gを組み込んだ端末は少ない」(レスニック氏)とし、差別化の1つとする狙いだ。
レスニック氏はまた、次世代技術となる「WiMAX Release 2」も紹介した。IEEEは今週、「IEEE 802.16m」を、“4G”こと「IMT-Advanced」の標準承認に向けてITU-R(ITUの無線通信部門)に提出しており、WiMAX Forumもこれを支援する。Release 2は802.16mと平行して仕様を固め、「IEEE 802.16e」をベースとした「WiMAX Release 1」との互換性を確保するという。
WiMAX Forumとしては今後2年間は、Release 2と標準化プロセスや認定にフォーカスする方針。2011年末をめどにRelease 2に対応するネットワークや端末をリリースすることを目指す。「競合より2〜3年リードできる」(レスニック氏)
米Intel アーキテクチャ事業部担当副社長でWiMAXプログラムオフィス担当ゼネラル・マネジャー、スリラム・ビスワナサン(Sriram Viswanthan)氏(右から4人目)、イスラエルAlvarionのCEO、ツィビッカ・フリードマン(Tzvika Friedman)氏(右から5人目)、Samsungのグローバルマーケティンググループ担当副社長、ハン・ソン(Hung Song)氏(右から3人目)などが参加した
WiMAXは2009年が離陸の年
この日は、通信事業者してClearwire、Yota、WiMAXをプッシュするIntel、機器メーカーとしてSamsung、Alvarion、Huaweiなどが集まった。
米国でWiMAXを提供するClearwireで国際展開を担当する社長、バリー・ウェスト(Barry West)氏はこの日、スペイン進出計画の詳細を明らかにした。スペインでは3.5GHz帯を利用し、まずは2都市でサービスを展開する。ウェスト氏は「WiMAXは転換点を迎えた。WiMAXはなくならない。今や議論は、“LTEと比べてどちらが新しいのか”になった」と自信を見せる。そのLTEに対しては、「ハイプ(誇大宣伝)だ。既存の資産を守りたいだけ」と言い切った。
Yotaの社長兼CEO、デニス・スヴェルドロフ(Denis Sverdlov)氏も強気だ。6月にモスクワとサンクトペテルブルグの2都市で商用サービスを開始したところ、8月には加入者が10万人を超えるなど経過は順調だ。現在、提供エリアは3都市に増え、加入者数は10月中の20万人達成を見込む。ユーザーの3人に1人は常時接続で利用しており、ユーザーあたりのデータ使用量(下り)は、平均して月に10Gバイト。これはロシアでは、ケーブルの20倍、GSMの100倍の量だという。
サービス開始から数カ月しか経過していないYotaだが、音楽サービスなどの関連事業にも着手している。VoIPを利用した通話サービスの準備も進めており、間もなくGSMとWiMAXのデュアル端末を発表する予定だ。
Yotaも国外展開を計画中で、ベラルーシ、ペルーなど3カ国でWiMAXサービスを提供する。「ユーザーは技術の名前を気にしていない。快適にモバイル環境を利用したいだけだ」とスヴェルドロフ氏は述べた。
通信事業者2社は、R2へも期待を寄せている。「R2ではオペレーター側では基地局側のスループットが、ユーザー側では端末のスループットが飛躍的に改善する」とClearwireのウェスト氏。YotaはSamsungとR2のテストを開始したという。
課題といわれているローミングについては、Clearwire、Yota、UQがローミングに向けて作業を進めているところだ。Wi-Fiと同じようなローミングを実現していくとウェスト氏は述べた。
自信を見せたのはオペレータだけではない。例えばネットワーク機器ベンダーのHuaweiでCDMA/WiMAX製品ライン担当社長を務めるシァオ・ミン(ZhaoMing)氏によると、同社のWiMAX関連の売り上げは2008年に2億ドルに達し、2009年には5億ドルを見込むという。「WiMAXは2009年が離陸の年だ」(ミン氏)。
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