「目先の利益より、5〜10年後の成長に向けた投資を」――売上3兆円突破のソフトバンク
初の売上高3兆円突破を実現したソフトバンクグループ。今後は目先の利益を追うより、足元の基盤作りに注力するとし、設備投資とアジア向け事業への投資を強化する。
ソフトバンクグループが5月9日、2011年3月期の決算を発表した。累計売上高は前年比8.7%増の3兆46億円、営業利益が前年比35.1%増の6291億円で増収増益となった。
売上高の3兆円突破は同社初で、連結営業利益はKDDIの4719億を上回り、NTTドコモの8447億に迫る勢い。上場企業すべての営業利益ランキングでも、NTT、NTTドコモに次ぐ3位につけている。同社社長の孫正義氏は、「(ドコモやKDDIなどの)他社が横ばいで推移する中、大きく業績を伸ばした」と胸を張る。中でも収益の柱となっている移動体通信事業は、ドコモやauの営業利益増加率が横ばいや微減で推移する中、54%伸ばすなど絶好調。スマートフォンブームの火付け役となったiPhoneの投入効果が、大きく業績に反映された1年となったようだ。
目先の利益より、5〜10年後の成長に向けた投資
今後の業績見通しについて孫氏は「これまでが奇跡に近い実績だった。毎年50%も伸びるのは難しい」と話すなど、増益率が下がる可能性があることも示唆している。その背景には、他キャリアがスマートフォン事業に本腰を入れ始めたこともあるだろう。こうした状況をふまえ、今後の事業の方向性については「目先の利益より、5〜10年後の成長に向けた投資を行う」とし、足元の基盤固めに注力するとともに今後の伸びが期待される事業への投資を強化する考えだ。
携帯電話事業については、「今後2年の最優先事項は設備投資」とし、インフラ企業としての足場を固める考え。2年連続で5000億円規模の設備投資を行い、「現時点のauやドコモと同等程度につながるまで、何としてもやりぬく」(孫氏)と意気込んだ。
もう1つの軸は、今後大きな市場の伸びが期待されるアジア市場向けサービスへの投資の強化。その取り組みの1つとして、ファッションeコマースサイト大手の「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイとともにジョイントベンチャーの「トゥデイホンコン(仮称)」を設立し、ソフトバンクが出資する中国ECサイトの淘宝上での展開を目指す。
また、同社が出資する中国のオンラインテレビサービス「PPTV」については、2月からiPad向けネットテレビサービスを提供。コンテンツ面では中国サッカーリーグの独占配信を開始する。
ほかにも、吉本興業とのジョイントベンチャー企業「コンテンツバンク」を通じたコンテンツ配信の世界展開や、米ファッションeコマース大手Gilt Groupeとのジョイントベンチャー企業「Gilt Japan」を通じたスマートデバイス向けeコマースサイトの拡充などを計画している。
関連記事
- 2年で設備投資1兆円、“つながるソフトバンクモバイル”目指す――孫正義氏
決算会見に登壇したソフトバンクモバイルの孫正義氏が、この2年で設備投資を強化すると明言。2年で約1兆円を投じ、“つながるソフトバンクモバイルを”目指すとした。 - iPhone好調のソフトバンク、「勝利の方程式」は第二幕へ
iPhone効果で移動体通信事業が好調なソフトバンクグループの第3四半期決算は増収増益。Androidが台頭し始める中、「主軸がiPhone、iPadであることは当分変わらない」と自信を見せた。 - パケット収入増の柱はスマートフォンに――ドコモ決算会見
ドコモが2010年度決算を発表。音声収入減をパケット収入増やコスト削減で補い、減収増益。2011年度はパケット収入増の柱がスマートフォンとなる見込みで、販売台数600万台を目標に掲げる。 - 「何としてもauモメンタムの回復を成し遂げたい」――KDDI、スマートフォンへのシフトをより鮮明に
KDDIの2011年3月期の決算は減収増益。今後はスマートフォンへのシフトをより鮮明なものとし、「解約率」「MNP」「純増シェア」「データARPU」の改善を図ることで、連結ベースでの増収増益を目指す。 - auのスマートフォン、通期販売目標は400万台――5月に新モデル発表会も
KDDIの田中社長が、スマートフォンの目標販売台数に言及。2011年度は通期で400万台を目指すとした。また、新モデルの発表会は5月に開催するという。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.