使い過ぎユーザーは制御、でもスマートに――スマホ時代のドコモ流トラフィック制御:CEATEC JAPAN 2011
スマートフォンの普及でトラフィックが急増し、その対策に追われる通信キャリア。利用が多いユーザーへの通信制御も対策の1つだが、ドコモの制御技術はとてもユニークだ。
フィーチャーフォンに比べて、格段にパケット通信量が増えるスマートフォン。このスマートフォンが本格的な普及期に入ったことから、通信キャリア各社がトラフィック対策に本腰を入れ始めている。
CEATECでキーノートスピーチを行ったNTTドコモ 取締役常務執行役員の岩崎文夫氏も、トラフィック対策に言及し、自社の取り組みを紹介した。
同社は2010年後半から、スマートフォンへの本格的なシフトを開始し、製品ラインアップを拡充。その戦略が功を奏し、スマートフォンの販売台数が急速に伸びている。8月末時点の累計販売台数は300万台に迫る勢いで、「年度末目標の600万台を上方修正する可能性もある」(岩崎氏)というほど好調に推移。しかし普及に伴ってデータトラフィックも急増しており、その対策を急いでいる。
ドコモは(1)周波数の利用効率がよいLTEサービス「Xi」の拡大展開(2)通信速度の制御(3)フェムトセルや無線LANへのデータオフロード の3つを対応策の柱としているが、中でも興味深いのが通信速度の制御に使われている技術だ。
スマートフォンが普及し始めた昨年来、モバイルネットワーク飽和の危機が叫ばれているが、この主な要因となっているのは、実はごく一部のユーザーに過ぎない。岩崎氏によると「定額ユーザーの5%が、全体の約半分を使っている」という。ドコモでは、ネットワークを公平に利用できるよう、特に利用量が多いユーザーの通信速度を制御しているが、この制御の柔軟性には驚かされる。
2009年10月から同社では、直近3日間に300万パケット以上使ったユーザーを“利用が多いユーザー”とみなして制御の対象としている。そして、パケット利用が多いユーザーと一般ユーザーがトラフィックの混み合った場所にいる場合には、一般ユーザーを優先させるよう基地局側で制御する。この制御をすべての基地局で一律に行うわけではなく、混雑しているエリアや時間に限って適用しているのがユニークな点。岩崎氏は「きめ細かい制御ができており、ネットワーク全体のキャパシティを効率的に使えるようにしている」と自信を見せた。
Xi対応スマートフォンは10月に4機種を発表
トラフィック対策の主軸となるXiは、これまでデータ通信端末のみだった端末ラインアップを拡充し、新たにタブレット端末2モデルを投入。スマートフォンについても「10月に発表会を行う」(岩崎氏)とし、CEATECで参考出展している新モデル4機種を正式に発表する予定だ。
エリア展開については、2011年度末までに全国の県庁所在地と政令指定都市に拡大。また2011年度末までには、東京と博多の間の全駅構内をXiエリアにする計画だ。
通信速度は、現在、屋内の一部エリアで提供している下り最大75Mbpsのサービスを屋外でも展開。時期は未定ながら、1.5GHz帯の15MHz幅を利用することで実現する下り最大100Mbpsのサービスについても、都市部の屋外を皮切りにサービスを提供する予定としている。
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