第34鉄 さよなら「昭和顔」の1000形――京浜急行電鉄大師線杉山淳一の+R Style(3/5 ページ)

» 2010年06月25日 23時15分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 鈴木町の次は川崎大師駅。京急大師線の旅としてはここがメインコンテンツになるところだが、とりあえず終点まで乗り通して、あとで立ち寄ってみよう。

 次の駅は東門前。「ひがしもんぜん」と読む。もちろん大師様の東門に由来する。川崎大師の広さを感じさせる駅名だ。その次の産業道路駅はその名の通り、産業道路のすぐそば。なにやら工事中の雰囲気で、あれ、ここから先は単線になっているようだ。そうだっけ? その単線の先は、産業道路を横切る踏切になっている。踏切を越えると複線に戻った。

京急大師線の主力 1500形
産業道路駅と交差点
産業道路の踏切付近だけ単線になる

川崎貨物駅を「高みの見物」

 実はこの踏切、僕はクルマで通る機会のほうが多く、電車で通過するのは8年ぶり。ドライバーの立場からするとここは大変な難所で、この踏切は渋滞の原因の1つにもなっている。この辺りの渋滞は踏切だけが原因ではなく、首都高速の横羽線と川崎線のジャンクションの工事が続き、車線が減少しているせいでもある。産業道路駅の工事と踏切の単線化は、大師線を地下に潜らせる工事のためらしい。踏切と高速道路、両方完成するまでは渋滞が続きそう。

小島新田に到着

 複線に戻ってしばらく進むと、もう終点。小島新田駅だ。江戸時代に小島さんが干拓して新田を作ったところ、というけれど、もはや田んぼは見あたらず、住宅地と町工場が広がっている。そして突き当たった線路の先は、鉄道ファンのお楽しみスポット、川崎貨物駅だ。その川崎貨物駅を渡る歩道橋があるので、ちょっと散歩してみよう。歩道橋を歩くと心地よい風が吹き抜ける。正面の空に、羽田空港から高度を上げていく旅客機が見える。

小島新田駅

 歩道橋からは川崎貨物駅の南北方向が見渡せる。北側には地下トンネルの入り口があって、これは東海道貨物線。トンネルの向こうは大井埠頭の東京貨物ターミナル。長いトンネルは羽田空港の敷地をかすめていて、京急空港線と東京モノレールの天空橋駅あたりを通る。そのあたりに駅を作り、この貨物線を空港アクセス路線にしようという案が検討されているけれど、まだ実現への動きはない。この線路を走る列車に乗ってみたい。去年、JR東日本が貨物線体験ツアーを行ったのだが、私は都合がつかず乗れなかった。

川崎貨物駅北側 左下のトンネルが東京方面の海底トンネル入り口
横浜臨海鉄道のディーゼル機関車

 歩道の南側は石油タンク車の操車場になっている。青いディーゼル機関車は神奈川臨海鉄道の車両だ。国鉄のDD13形に似た凸型で、前後の移動が多い入れ換え作業に適している。神奈川臨海鉄道は川崎の埋立地に路線を張り巡らせており、臨港地域でクルマを走らせていると、ときどき小さな踏切で貨物列車に遭遇する。

川崎貨物駅南側 タンク車の入換え作業中

 ここは動きの少ない駅なのだが、このときは幸運にもタンク車の入れ換えが始まっていた。日差しの強さを我慢して、しばらくその様子を眺める。機関車が貨車を後ろからグイッと押し出すと、切り離された貨車はポイントを渡って仕分けられていく。貨車には係員が乗ってブレーキを操作する。港で艀(はしけ)を渡り歩く船員の様子に通じるワザがありそうだ。

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