テスラモーターズジャパンは10月26日、アジア圏の旗艦店となるショールームを南青山にオープンした。オープン2シーターのEVスポーツカーを世に問うたテスラの戦略を聞いた。
「なぜEVのスポーツカーなのか? もっとも聞かれる質問だ。われわれは、世界にインパクトを与えたかったのだ」――アジア太平洋地域担当ディレクターでありテスラ日本法人の社長を務めるケビン・ユー(Kevin Yu)氏は、こう答える。かれらのビジネスモデルは「プル型」なのだという。ユーザーが買いたいと思うEVを作ることから始めてゆっくりとEVの需要を喚起していく。
同社初のモデルにして、2010年5月に国内でも販売を始めた「テスラ ロードスター」の価格は1276万8000円から。最高速度は時速200キロ、静止状態から時速100キロまで3.9秒(上位モデルのロードスタースポーツでは3.7秒)。航続距離はガソリン車にも劣らない394キロを実現した。
ユー氏は「テスラ ロードスターは、フェラーリよりも速く、ポルシェ911よりも安い。しかもEVだ。これを買わない理由は見当たらない」と続ける。ポルシェよりも安いというが、それでも1000万円を超えるスポーツカーだ。同社の狙い2つある。1つは、この金額のクルマを楽しみのために購入できるハイエンド層がこぞって買うことで、世の中にインパクトを与えること。
もう1つの狙いは「購入することは、クルマを楽しむだけでなく、EVの未来に対する投資につながる」ということだ。テスラ ロードスターが売れることで、より良いEV技術開発のための原資が生まれ、さまざまなタイプのEVを登場させられる。すでに同社では2012年内にセダンタイプの「モデルS」投入を予定し、トヨタとの提携による「RAV4」のEVモデルも開発している。
「テスラ ロードスターのキーになる技術は3つ。バッテリー、モーター、制御モジュールだ。ショールームの壁面を飾る写真にもこれらの技術を選んだ」(ユー氏)。バッテリーは、パナソニック製のリチウムイオンセルを1台当たり6831個搭載する。具体的には621個のセルを1枚の「シート」にし、11枚のシートが1台のバッテリーユニットになる。
テスラ ロードスターのバッテリーは、ノートPCなどで使われるリチウムイオンバッテリーと同じ汎用品で構成されている。ユー氏は、「技術的にも成熟しており性能も十分われわれの要求に応えられる。独自に開発することを考えればコスト面でも有利だ」という。電池寿命は7年または16万キロだ。
また、モーターの重量は約50キロ。後軸上部の単速ギアボックスに直結しており、シフト操作やクラッチ操作が存在しない。リバースギアもなく、後進時にはモーターを逆回転させるだけだ(時速24キロでリミッターがかかる)。
最大出力は215キロワット(288馬力)/5000〜6000rpm、最大トルクは370ニュートンメートル/5400rpm(ロードスター スポーツは215キロワット/4400〜6000rpm、400ニュートンメートル/5100rpm)、最大回転数は1万4000回転に達する。
制御モジュールは運転中および充電中の電流を管理する。充電では、交流(AC)から直流(DC)への変換を行い、運転中にはトルクを生み出すためにDCからACへと変換する。テスラ ロードスターで利用される電気のすべてを管理しており、駆動時のエネルギー効率は97〜98%(2%は熱エネルギーになり失われる)。走行負荷抵抗などを考慮しても「統合効率は88%」とのことだ。
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