世界最大のオール2階建て旅客機、エアバスA380を解剖する秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/6 ページ)

» 2011年02月23日 08時00分 公開
[秋本俊二,Business Media 誠]

ファーストの上をゆく「スイートクラス」

 到着したハブ空港から目的地へ向かう小型機でのフライトについては単なる移動だとしても、主要都市間を結ぶ10時間以上の長距離フライトでは、ゆったりしたスペースで従来にはなかったエレガントな空の旅を提供したい。それがエアバスA380を生み出したコンセプトだった。前回のレポートで報告したように、2011年末にも初就航が予定されるボーイング787も、最新技術を駆使して快適なキャビンを実現しようとしている。しかし、その快適さをより深く追求できるという意味で、広大なスペースを乗客に提供できるA380には残念ながら及ばない。

 A380は1階と2階を合わせた総床面積がボーイングのジャンボ機に比べて1.5倍も広く設計されていることは、冒頭で述べた。ところが設定している3クラスでの標準座席数は、ジャンボ機の412席に対してA380は525席──つまり座席数では1.27倍しかない。そのぶんA380は座席以外に使用できるスペースが広く、アイデア次第でこれまでの旅客機とはまったく異なったキャビン設計やシートの配置が可能になる。2007年10月にシンガポール/シドニー線でA380をデビューさせたシンガポール航空は、標準座席数525というメーカーの設定に対して471席でキャビンを設計し、ファンたちを驚かせた。その目玉となったのが、A380だけに導入した「シンガポール航空スイート」と呼ぶ新しいクラスだ。

飛行機と空と旅 2007年10月25日にシンガポール/シドニー線でデビューしたシンガポール航空のA380(画像をクリックすると拡大します)

「クラス構成としてはエコノミー(399席)とビジネス(60席)を含めて3クラスですが、『シンガポール航空スイート』は単にファーストクラスの名前を変えたのではありません」と同社は主張する。「私たちは従来のファーストの上をゆく、まったく新しいキャビンを創造しました」

 そのスイートクラスは、メインデッキ(1階席)の最前方ブロックに12席を設置した。特色は、1つひとつが完全に独立した個室スタイルであること。スライド式のドアを閉め、ブラインドを下ろせば、豪華で贅沢なプライベート空間が出現する。2本の通路にはさまれた中央の2席については、隣り合わせにレイアウトされ、カップルで利用する場合は仕切り板を下げて文字通り2人だけの“スイートルーム”に変えることも可能だ。A380は「空飛ぶ豪華ホテル」という異名を持つが、初就航便を搭乗取材し、その表現が決して大袈裟ではないことを私も実感した。

飛行機と空と旅 隣り合わせの中央2席は2人だけの“スイートルーム”に(出典:シンガポール航空)

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