王子から京浜東北線で秋葉原乗り換え。総武線で2つ目の両国駅で降りる。この両国駅は1904(明治37)年に総武鉄道が始発駅「両国橋」として開業した。都心部への連絡は隅田川を往来する船が担っていた。国有化後も始発ターミナルとして賑わい、鉄橋によって都心へ直通して以降も、海水浴列車の始発駅として貫禄を保っていた。今の上野駅のように「近距離電車の中間駅、遠距離列車の始発駅」という形だった。しかし、総武線快速が東京駅へ連絡するとその機能は薄れていった。現在も総武線のホームの北側に始発列車用のホームが残っている。ちなみに、江戸東京博物館と両国国技館は、両国駅の貨物駅の跡地にできた。
「東京の交通100年博〜都電・バス・地下鉄の“いま・むかし”〜」(参照リンク)は、7月14日から始まり、9月10日まで開催されている。実車展示の目玉は函館市交通局から帰ってきた「ヨヘロ1形」だ。明治30年代に製造されて、東京市電として活躍した後、1934(昭和9)年に函館市交通局に譲渡された。この年、函館では歴史に残る大火災があり、その復旧のために25両が津軽海峡を渡ったとのこと。函館市は今でも除雪車に改造して使い続けていたというから驚きだ。その電車が76年ぶりに帰ってきた。
ちなみに「ヨヘロ」とは4輪単車のヨン、ベスチビュール付き車両のベ、車体を改造した年、大正6年のロクから付けられたという。ベスチビュールとは、運転台につけられた雨避けの板とのことだ。ヨヘロ1形は最盛期に206両が活躍したという。展示室内には当時の車両を再現した原寸大モックアップがあって、記念撮影ができる。
もう一台の実車展示は6000形の6086号。荒川遊園にある電車の同型車で、こちらは黄色に赤帯の後期の姿だ。この電車は引退後、鉄道ファンの個人宅に引き取られていたものの、経年劣化で解体寸前だった。これを鉄道博物館学芸員の岸由一郎氏が見つけ出し、関係各方面への働きかけによって荒川車庫に戻された。岸氏は2008年の岩手・宮城大地震で被災され亡くなった。この6086号は岸氏の遺産ともいえる。
6086号の展示は、映画『3丁目の夕日'64』(参照リンク)とタイアップしたユニークなスタイルになっている。電車の横に映画で使用したセットが置かれて、活躍した当時の姿が再現されている。建物と並んだ姿も懐かしいけれど、電車内に入りロングシートに座って、窓越しに建物を眺めると、いまにも走り出しそうな臨場感がある。
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