さらに列車のシートに実際座れるようになっている展示では、来場者が実際に取っ替え引っ替え、いろんなシートを試すことができる。
有名な親子で座る「親子シート」もあった。小さな子どもでも背伸びせずにゆっくり車窓を楽しむことができるようになっているシート、実際の列車のシートとしては、かなり斬新なものだと改めて感じた。シートの座り心地はなかなかのもので、背中をホールドしてくれるクッションが心地よい。
それにしても、少子化が進む今、なぜ“子どものため”のプランを次々と繰り出しているのかとちょっと不思議にも感じる。ここから先は筆者の想像にすぎないのだが、水戸岡さん自身が子ども時代の社会に関わる初体験を大変重要なものだとつねづね感じていて、その体験を本物に触れることで価値ある素晴らしいものにしたい、それが文化の継承にきちんとつながっていくという思いがあるのではないか。
もちろん、鉄道会社にとって子どもたちは将来有望な顧客であることは間違いないとしても、心豊かな心地よい公共空間はより良い社会の実現につながるということ、そこまで水戸岡さんは見据えているはずだ。そう考えていくと、「デザインは公共に」「デザイナーは公僕であれ」と標榜する水戸岡さんの言葉もあらためて感じるところが多い。
地下1階のシンポジアに向かってみると、そこでは鉄道以外の、水戸岡さんがこれまで手がけてきた仕事を観ることができる。水戸岡さんはイラストレーターとして長く活躍したのち、40代に入ってから鉄道デザインを手がけるようになり、鉄道関連のデザイン賞を多数受賞することになった異色の経歴をもつデザイナーだ。
ここでは、イラストレーター時代の作品も数多く観ることができる。まぶしいほどの色使いで表現された動物、風景、人物。世界はすべて善きもので埋め尽くされているかのような多幸感を感じさせるイラストの数々、ここに水戸岡さんの今につながる原点を垣間見ることができる。
水戸岡鋭治さんのさまざまな側面、作品を一気に観ることができる展覧会は10月23日まで。
開催中〜10月23日(日) Open.11:00〜19:00(入場は18:30まで)
AXISギャラリー(AXISビル 4F)、シンポジア(AXISビル B1F)
東京都港区六本木5-17-1
入場無料、最終日は17:00まで(入場は16:30まで)
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