午前10時30分。トレインステーションの駅舎内はドレスアップした人たちであふれている。一見したところ年配のカップルが多いが、どの顔もハイスクールの生徒のように若々しい。出発前のワクワク感が、世界中から集まった人たちを高揚させているのだろう。いまからここで約20分間のワインセミナーがあり、カリフォルニアワインを試飲したあと、午前11時に乗車が開始される。
改札係にチケットを提示すると、彼は大げさな仕草で「ワイントレインにようこそ!」と迎えてくれた。私は列車の外観を撮影してから、予約したビスタドーム車両に乗り込む。階段を上がって2階席の指定されたテーブルにつくと、カリフォルニアのキラキラした太陽光が壁から天井にかけての大きな窓から差し込み、なんともいい気持ちだ。ウェルカムドリンクとして注がれたスパークリングワインを手にとり、隣のテーブルに着いたイタリア・ジェノバからの新婚カップルとグラスを重ねる。定刻の11時30分ちょうどに、列車はセントヘレナに向けて静かに動き出した。
お待ちかねのランチタイムが間もなく始まる。厨房は私がいるビスタドーム車両の1階にあり、先ほど覗いてみたらシェフたちが忙しそうに準備を進めていた。カリフォルニア・キュイジーヌは4皿のコースで、前菜および1皿目の料理はそれぞれ2種類から、メインは5種類からチョイス。チキンの胸肉、ラムチョップ、フレッシュサーモン──どれもおいしそうだ。
迷ったあげく、私は「ホタテの貝柱と海老のグリル」を前菜に、「季節の野菜を付け合わせたフレッシュサーモン」をメインにセレクトした。ナパは海が近くて魚介類が豊富だし、出発前にインタビューした料理長のケリー・マクドナルドさんが「かつて4年ほど地中海料理を学び、シーフード料理が得意」と言っていたのを思い出したからだ。実際、ふっくらとジューシーなサーモンはやや酸味を効かせた味つけが絶妙で、軽めの白ワインがどんどん進む。
隣のテーブルを覗くと、イタリア人カップルは2人とも赤ワインソースのラムチョップを選択。こちらもうまそうだ。ワインも赤を合わせながら、彼らは他の乗客よりもゆっくりと時間をかけて食事を楽しんでいた。
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