私たちの乗った便は、成田を離陸して順調に飛行を続けている。気流も安定し、フライトの妨げになるような雷雲などもルート上にはしばらくなさそうだ。もちろん、万が一機体にカミナリが落ちたからといって、そう慌てる必要はない。「旅客機と空港のQ&Aシリーズ」第3弾は、まずはこの落雷の問題にスポットを当ててみよう。
旅客機にもカミナリは落ちるのか? よく、そんな質問を受けることがある。「落ちます」というのが、その答えだ。──といっても、心配は要らない。以前取材したある機長も、こう話していた。
「フライトでは気象レーダーで飛行ルート上の雷雲をあらかじめキャッチし、それを回避して飛んでいますが、雲の多い日や悪天候の中ではごくまれに“被雷”することもあります。その場合に大事なのは、到着してから整備士に報告し、機体を十分に点検してもらうこと。機体の外観や通信装置、アンテナなどの入念なチェックを怠らなければ、カミナリは大きな問題ではありません」
機長も「被雷」という言葉を使っていたように、エアラインの世界では「落雷」とは言わない。カミナリは“落ちるもの”とは限らないからだ。平地で見ていると雷光は上から下に走るが、目標物さえあればカミナリは横にでも上に向かっても攻撃してくる。では、飛行中に旅客機が被雷した場合、乗客になぜ危険はないのか?
カミナリで人に被害が及ぶのは、それ受けて電気が身体を通り抜けたときである。その際に重いやけどを負ったり、ショックで心臓が停止して死に至ることがある。しかし機内の乗客は、金属でできた機体自体に保護されているため、安全なのだ。
カミナリが鳴ったときは車の中にいるといい──などとよく言われる。これは電気を金属ボディを通して地面に逃がしてしまうためで、同じことが旅客機にも当てはまる。
また飛行中は、大気との摩擦で旅客機の機体に静電気が生じる。この静電気が計器類や通信機器に影響を及ぼす可能性があるため、防止策として主翼や尾翼など機体の数カ所に静電気を放電させる「スタティック・ディスチャージャー」と呼ばれる装置が装着されている。スタティック・ディスチャージャーは長さ10センチほどの細い棒状のもので、飛行中にカミナリを受けてもこのスタティック・ディスチャージャーが避雷針の役割を果たすのだ。この放電装置が、中型機では20〜30本、大型機では計50本も取り付けられている。
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