目的地ロンドンでの時刻は、日本のマイナス9時間(サマータイム時はマイナス8時間)だ。成田を飛び立つと、西へ西へと進むにつれて1時間ずつ時計が巻き戻っていく。では、フライトを続けるコクピットの時計は、はたしてどの国の時間を指しているのだろうか? 「旅客機と空港のQ&Aシリーズ」第4弾は、巡航飛行から着陸までの4つの疑問に答えていく。
日本からヨーロッパに飛ぶ場合の飛行ルートを考えてみよう。成田空港を発った旅客機は北北西に向かい、新潟上空あたりから日本海へ出て、その後はシベリアルートを通過。ロシアから北欧を経て西ヨーロッパに入る、というのが一般的なルートである。
それぞれの地域と日本の間には当然、時差がある。では、コクピットの時計も、時差が変わるごとに時刻表示を切り替えているだろうか。あるいは自動的に切り替わるようにできている?
じつはどちらも不正解。どの国際線旅客機も、コクピットの時計は常にある一定の地域の時刻を表示している。時計が指し示している時間は、世界共通の標準時間として使用されるUTC(協定世界時)だ。たとえまだ日本を発つ前で、成田空港のランプに駐機していたとしても、コクピットと管制業務で使う時計は必ずUTCに合わされている。では、そもそもエリアごとの時間というのは、どうやって決まっているのだろうか?
地球は24時間で1周(自転)しているので、360度を24時間で割ると15──つまり世界の時間帯は15度間隔に24のゾーンに分けられている。子午線を15度分進むごとに1時間の時差が生じ、そして日付変更線を越えると日付が変わるわけだ。
その時間の基準になったのが、かつて世界標準時間に定められていたロンドンのグリニッジ天文台(ロンドンの時間)である。日本は兵庫県明石市(東経135度)を日本標準時間に決めていたので、基準となるロンドンからは135÷15=9──つまり世界標準時と比べて9時間の差があることになる(現在は「UTC+9」で表示)。
地球上の24のゾーンによって1時間ずつ時間が違うため、どこかの時刻に統一しなければ管制塔もコクピットも混乱してしまう。その混乱を避けるために、どの国のエアラインも世界標準時で飛ぶことが決められたのだ。
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