燃費競争から安全性能競争へ、ダイハツ ムーヴが5万円の衝突回避システムを導入した狙いちょっと未来のクルマを考える(1/2 ページ)

» 2013年02月06日 14時30分 公開
[岡田大助,Business Media 誠]
ムーヴ ムーヴと伊奈功一社長(出典:ダイハツ工業)

 2012年は軽自動車の販売が好調だった。全国軽自動車協会連合会のまとめによると、2012年の軽乗用車の年間販売台数は前年比36.8%増の155万7682台と2年ぶりのプラスとなった。その背景には、もともとの強みであった維持費の安さに加えて、燃費の良さからくる家計への安心感がありそうだ。

 しかし、軽乗用車=低燃費であることが当たり前になりつつあるいま、これらコスト面の優位さに加えて、安全性能の進化がトピックになる。

燃費競争でリッター27キロ超は当り前に

 2012年9月、スズキの「ワゴンR」がフルモデルチェンジを果たした。12月にはダイハツの「ムーヴ」がビッグマイナーチェンジ。また、近年、軽市場に変化をもたらしているホンダは、「Nシリーズ」の第3弾として11月に往年の名車「N360」をほうふつとさせる「N-ONE」を投入した。

 4年ぶりの新型となったワゴンR(110万9850円〜)は、減速エネルギー回生システム「エネチャージ」や、ブレーキを踏んで時速13キロ以下になると作動する新型アイドリングストップ機能などを搭載(参考記事)し、リッター28.8キロ(JC08モード燃費)を実現する。

 11月に登場したN-ONE(115万円〜)は、軽自動車を希望しながらも性能面や安全性で1クラス上のコンパクトカーの購入に至った層を取り込もうと大きくアピール。「新たなホンダの象徴的なモデル」と位置付ける力の入れようだ(参考記事)。JC08モード燃費はリッター27.0キロとした。

 「ミラ イース」でリッター30.0キロを打ち出したダイハツは、同車で培った技術をムーヴにも採用。CVTの温度をコントロールすることでエンジンの燃焼効率や動力伝達効率を高めるなど、既存技術の徹底追求によってリッター29.0キロを低価格(107万円〜)で打ち出した。発売1カ月で月販目標1万2000台を大きく上回る約2万1000台の受注があり、この戦略は成功したようだ。

燃費競争の次のステージは安全性能競争

 もはや軽乗用車にとって、好燃費であることは当り前になりつつある。各社が次なるステージとして開発に注力するのが安全性能の向上だ。軽自動車はボディサイズが小さく、車重も軽いことから衝突時の安全性を懸念する人もいる。これは1998年に規格が改訂され普通乗用車と同じ衝突安全基準を採用することが義務付けられてからも同様だ。

 ワゴンRでは衝撃吸収ボディ「TECT」を採用。このほかにも歩行者の脚部保護に配慮したフロントバンパー、頚部衝撃緩和性能に配慮したフロントシートなどを装着する。2014年以降、軽自動車にも装着が義務付けられる横滑り防止装置も一部のグレードでオプション提供する。

 N-ONEは、より安全面に力を入れた。横滑り防止装置を全グレードで標準装備したほか、一部の高級車などで採用される急ブレーキ時に自動的にハザードランプを高速点滅させ後続車へ注意を促すエマージェンシーストップシステムも全タイプで標準装備する。また、側面衝突時の頭部への衝撃を緩和するサイドカーテンエアバッグシステムを上位グレードを標準装備している。

 さらに一歩進んでいるのがムーヴだ。スバルの「EyeSight」などに代表される衝突回避支援システムを、「スマートアシスト」という名称で軽乗用車として初採用。しかも5万円という低価格でオプション設定した。

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