以上はもちろん、国境越えが特別なことではない欧州やアジアで起きたことである。では、日本ではどうか? 個人旅行が主流の欧米などで定着してきた「LCCスタイル」が、そのまま日本でも受け入れられるという保証はない。
日本では、LCCの極端に簡素化されたそっけないサービスに違和感を覚える人もいるのではないか。そんなことも懸念された。とりわけビジネスパーソン層にLCCが浸透するには、ある程度の時間がかかると予想した人も多い。出張などで頻繁に飛行機を利用する層は、大手エアラインが提供するマイレージサービスや空港のラウンジサービスなどに価値を置いているからだ。
しかし世界を見わたしてみると、これまでLCCが定着しなかった地域はない。新幹線や長距離バスに比べて「高くて当然」だった航空運賃が大幅に下がれば、日本でも飛行機での旅がぐっと身近なものになるだろう。グルメやショッピングなどのちょっとした理由で飛行機を使った週末旅行などを楽しむ人が増えるはずである。
2012年3月に、その先陣を切ってピーチ・アビエーション(以下ピーチ)が関空から離陸した。その年の夏には、エアアジア・ジャパン(現バニラエア)とジェットスター・ジャパンが続く。和製LCCの3社が同時に活動を始めたこの年は、日本の「LCC元年」と呼ばれた。
海外のLCCも、日本での路線を拡張している。2013年末までに日本に国際線定期便を就航した外資系LCCは計12社。その大半がアジアの会社である。2014年5月からは、中国のLCC春秋航空の傘下にある春秋航空日本が成田から広島、高松、佐賀の3都市へ就航する。既上陸の各社も日本での路線拡大に意欲的で、フィリピンのセブ・パシフィック航空は2013年12月から関西/マニラ線を増便し、さらに2014年3月からは成田/マニラ線と中部/マニラ線を開設。マレーシアのエアアジアXも同じ2014年3月より中部/クアラルンプール線を新たに就航している。
海外勢が日本に注目するのは、マーケットの“伸びしろ”がまだまだ多いと判断しているためだろう。和製LCCが日本の空を飛び始めたとはいえ、座席数と運航距離をかけ合わせた「輸送能力」をみると、LCCのシェアは日本ではまだ3%程度。東南アジアの約50%、西欧の約40%を大きく下回っている。
そんな海外からの攻勢に、もちろん日本勢も黙っていない。関西を拠点とするピーチは2013年10月に就航した成田線で路線数は14に、ジェットスター・ジャパンも2013年冬スケジュールですでに14路線を運航している。ピーチは2014年1月に関西から高雄(台湾)への路線もスタートした。エアアジア・ジャパンから社名を変えて2013年12月に成田から那覇と台北への路線で運航を始めたバニラエアは、2014年3月に新千歳とソウルへの路線も追加している。
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