客室乗務員の日々に密着。出発までの時間、彼女たちは空港のどこで何を?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
ボーディングブリッジを通って機内に進むと、乗客1人ひとりを入り口で笑顔で迎えてくれる客室乗務員たち。機長や整備士、グランドハンドリングのスタッフたちが空港で出発準備を進めている間、彼女たちはどこで何をしているのか?
大切な“保安要員”としての仕事
乗客を笑顔で出迎え、手にしたボーディングパスをチェックして指定の座席まで案内したあとは、新聞やおしぼりを1人ひとりにサービス。さらに食事の時間には全員に速やかにミールが行き届くよう、ギャレーでてきぱきと準備を整え、食事が終わると機内販売のカタログをもって客席を回る──。
客室乗務員の機内での仕事はじつに多彩だ。では、その中で最も重要なのは何だろうか。笑顔での対応? おいしいワインや食事の提供? いや、そうではない。彼女たちに課せられた最重要任務は「乗客の安全を守る」こと。保安要員としての役割である。
客室乗務員=機内サービス要員──そんなイメージをもっている人が多い。しかし客室乗務員という職業はもともと、救命・保安要員としてスタートした。「乗客の安全を守る」ことは現在でも客室乗務員の最も大切な仕事で、機体にトラブルが起きた場合の緊急着水時の対応や、ハイジャックなどに備えた武術の習得、ケガ人や病人が出たときのファーストエイド(応急手当)などの厳しい訓練が日々繰り返されている。
すべての準備を終えてフライトへ
とくに新人訓練の期間中は、毎日朝から夕方までカリキュラムがびっしり。担当のトレーナーは「最初は普通の女の子として入社してきた新人たちが、訓練が終わる数カ月後には1人ひとりに“保安要員”としての自覚が備わり、みんな見違えるようにたくましく成長を遂げている」と話していた。その訓練の様子は、回を改めて詳しくレポートしよう。
さて、フロアには人の数がかなり増え始めている。これから迎える午後の出発便ラッシュを前に、各フライト担当の客室乗務員たちが続々と出社してきているようだ。
奥に設置された等身大の姿見の前では、身だしなみをチェックしている人も目につく。
「行ってきまァす!」
ブリーフィングを終えたチームの客室乗務員たちが、そう言って元気に出かけいった。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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