飽和状態の映画市場、シネコンの繰り出す次の一手とは?:映画ウラ事情
18年ぶりのスクリーン数減少など、さまざまな要因が重なり、シネコンは曲がり角を迎えている。だが、そんな状況をぼーっと見ているわけではない。
日本でシネコンが本格展開を始めて今年で20年。右肩上がりでスクリーン数は増え続け、今やシネコンは当たり前の存在となったが、住友商事がシネコン運営子会社のユナイテッド・シネマの株を売却し、ショッピングセンターの建設減少によるシネコン新設減、18年ぶりのスクリーン数減少など、さまざまな要因が重なり、シネコンは曲がり角を迎えている。
もちろん、映画業界も例外ではない。今年発表された2011年度の総興行収入は、2010年度の約18%減となる約1812億円、入場者数は17%減の1億4472万人。スクリーンあたりの興行収入も5426万円と、シネコン元年といわれる1993年と比べると、なんと4割減にもなるのである。さらに、3Dの物珍しさも薄れ、100億円を越えるヒット作が出るかどうかという2012年、シネコンや映画業界はより一層厳しい状況となりそうだ。
だが、そんな状況をぼーっと見ているわけではない。色々と仕掛けを施しているのだ。
まず、シネコン大手のワーナー・マイカルは、「THEATUS(シアタス)」と名付けた、映画以外のコンテンツを上映するODS(アザー デジタル スタッフ)事業を強化することを決定。音楽イベントやスポーツイベント、そのほか、バレエやクラシックコンサートなど、2013年2月期に約100作品を上映する計画を発表した。
ほかにも同社は、8月23日から予約をスタートさせた全60劇場でのスクリーン貸し出しサービスを始める。こちらは、デジタルプロジェクターでスクリーンに資料や映像を映し出し、別の場所にある劇場のスクリーンにその映像を同時放映することも可能なため、企業によるセミナー、講演会、学会などの利用を想定しているとのこと。
一方、東映系のシネコン、ティ・ジョイでは日本での未公開作品を公募し、全国6劇場のレイトショー枠で上映する「KINEZO PREMIERE(キネゾー・プレミア)」をスタート。ティ・ジョイによる審査はあるが、応募者が60万円を支払うと上映できる仕組みで、1週間ごとに劇場を変え、3週間上映。料金は通常のレイトショーと同額の1200円。まぁ、書籍の自費出版の映画版と思えば、分かりやすいだろうか。
関係者によると、「趣味は多様化し、移動中にスマートフォンやタブレットで映画や海外ドラマを観ることができるようになった。さらに、公開前に映画をインターネット経由で上映するVOD作品も増加。そこにきて、市場が飽和してきているのですから、早急に映画上映以外の収入源を確保しなくてはいけない。それゆえ、新たな試みは増えるでしょうし、今後、確実にコンテンツ争奪戦に拍車がかかる」と話す。
映画で稼げないから、映画以外に走るのは当然なこととはいえ、どうなる!? 映画業界、今後も目が離せそうにない。
映画ライター:安保有希子
1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。
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