この夏、ヒコーキ旅行のすすめ:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/4 ページ)
旅とは、目的地に着いてから始まるものではない。目指す先が欧米であれ、アジアであれ、出発地の空港で搭乗ゲートをくぐった瞬間から旅は始まる。それが私の考え方だ。本格的な夏休みを前に、今回は“ヒコーキ旅行”のすすめ──。
ローカルな空旅の妙味
“空の旅”そのものを愉しむ──それは何も、海外へのフライトに限ったことではない。
例えば東京から大阪や九州への移動で、その日のフライトルートによって座る席を決めている人がいる。福岡行きなら向かって左側に、伊丹や熊本方面へは右側にといった具合に。途中、上空から富士山を眺めることを楽しみにしているからだ。
眼下にきらめく都会のネオンを満喫するために、国内の移動の多くは夜間フライトを利用するという人も少なくない。また地方へ行けば、本土と離島や離島間を結ぶ路線にしか飛んでいないレアな飛行機を体験することもできる。先日、友人であるヒコーキ好きの編集者から「ちょっと休みがとれたので、薩南諸島をめぐるアイランドホッピングをしてきた」と報告があった。
その日の朝、彼はスウェーデン製のSAAB340という小さなプロペラ機で鹿児島を飛び立ち、開聞岳を眺めながら喜界島へたどり着く。その後、奄美大島へ、沖永良部島へ、与論島へと乗り継ぎ、そこから奄美大島へリターン。奄美大島からは喜界島と徳之島を往復して、出発地点の鹿児島に夕方帰還した。いったい何日かけて?
いや、そうではない。これがわずか1日の旅なのだ。小型機は低い高度を飛ぶので、島の家並みや海面をゆく船などを間近に見ながら楽しい旅だったと彼は言う。もしどれか1便でも遅れてしまったら、乗り継げなくなるのでは? そんな不安を抱く人もいるだろうが、彼は笑みを浮かべて首を振る。
「心配ないんです。このコース、1機のサーブがずっと便名を変えながら飛んでいくので」
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