この夏、ヒコーキ旅行のすすめ:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
旅とは、目的地に着いてから始まるものではない。目指す先が欧米であれ、アジアであれ、出発地の空港で搭乗ゲートをくぐった瞬間から旅は始まる。それが私の考え方だ。本格的な夏休みを前に、今回は“ヒコーキ旅行”のすすめ──。
飛行時間3分のフライト
もうひとつ。沖縄県の南大東島と北大東島──那覇から350キロほど東の太平洋上にあるこのふたつの離島ぶ路線は「日本一距離の短い定期便」として知られている。
南大東島と北大東島の空港間の距離は、約10キロにすぎない。ちなみに羽田空港の滑走路の長さは3000メートル。それを考えると、10キロという距離がいかに短いかが想像つくだろう。つまり羽田空港の滑走路を4本つなげて、その端から飛び立つと、反対側の端に到着する前に届いてしまうのだ。
この両島の間を定期便で結んでいるのが琉球エアーコミューターで、使用しているのはカナダ製のDHC-8というこちらも小型のプロペラ機。時刻表には「飛行時間15分」と出ているが、風向き次第ではさらに時間が短縮される日も珍しくない。私が以前、この路線を利用したときには、機内での「本日の飛行時間は3分を予定しています」という乗務員のアナウンスに思わず吹き出してしまった。
さて、空の旅の楽しさを語り始めると、きりがない。この文章を目にしているみなさんも、本格的な夏休みシーズンを前に旅の準備を進めていることだろう。地上を離れ、雲の上で過ごすひととき。その“非日常的”な時間を、存分に楽しんでほしいと願う。どうぞ、楽しいフライトを!
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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