転換点となったG-SHOCK、カシオはスマートウオッチを作るのか――増田裕一さん:G-SHOCK 30TH INTERVIEW(5/5 ページ)
G-SHOCKインタビュー連載、最終回は、初代G-SHOCKの商品企画を担当し、以来ずっとカシオの時計事業を中から見続けてきた事業部長、増田裕一氏だ。30年間のG-SHOCKの歴史でターニングポイントとなったモデルとは? ブームの終わりをどう乗り越えたのか? 1万2000字以上のロングインタビューをお届けする。
スマホと通信する腕時計でも、電池交換2年は守りたい
――私、2010年の3月にも増田さんにインタビューをしているんです(参照記事)。当時はまだ、低電力で通信が可能なBluetoothの規格(Bluetooth Low Energy規格)の策定中で、まだGBシリーズのG-SHOCKが出てくる前だったんですけど、あのインタビューの時も増田さんは「毎日充電しなきゃいけないような、すぐ電池が切れるようなものでは、時計はダメなんです。電池交換2年は守りたい」とおっしゃていたのを覚えています。
増田: そうでしたね。あの時から、そこはブレてないです(笑)。実際僕もスマートウオッチについては、いろんな人に、いろんなことを言われています。外から食われるよ、とかね。でも、iWatchに至ってはまだ出てすらいないのに、そんなの心配したってしょうがないでしょ。Appleはあれだけのイノベーションを起こしている会社ですから、Appleが何かやるとなったらそれなりのものはでてくるのだろうと思います。何をやってくるかは分からないけど、でもきっとiWatchは、われわれのやっていること(リストウオッチ)とは違うと思うんです。
活動量計入りG-SHOCKの可能性は?
――活動量計の話に戻りますが……私はFuelBandではなくて、Fitbit One(参照記事)を使っているんです。
増田: なるほどFitbitね。あとJAWBONEとFuelBand、今日本で活動量計というとだいたいこの3つですよね。
――はい。Fitbit Oneを使っているのですが、これが時計に入ってくれればどんなに楽だろうかって、よく思うんですよ。1週間に1回くらいUSB充電しなくてはいけないし、何より、毎日ポケットに付けて忘れないようにするのが意外と大変。女性の服ってポケットがないのも多いので付け忘れてしまうんですよね。たくさん歩いた日に限って家に忘れてきてしまって、「こんなに歩いたのに、今日はゼロ歩だよ」なんてガッカリすることも結構あるんです。あと、私自身はまだやったことがないのですが、うっかり服ごとFitbitを洗濯して壊れちゃった、という話もよく聞くんです。
増田: 手につけないでポケットに付けているの? 手につけたほうが便利そうなのに。
――ポケットにつけています。Fitbit OneとZipはクリップがついていて、ポケットに引っ掛けるタイプなので。Fitbit Oneは睡眠計の機能があるので寝るときだけバンドにつけて手首に巻くのですが、人前で着けるようなバンドではないんですよね。
増田: そうかそうか。だからリストデバイスって、結局そうやってずっと身に付けていられないんですよね。
――そうなんです。G-SHOCKやBaby-Gに活動量計が入ったらいいのに、って思ってる人は、私以外にもいっぱいいると思います。PRO TREKもニーズが多いかもしれない。
増田: 技術的な部分が解決できれば、将来的には可能かもしれませんね、活動量計が入ったリストウオッチ。まだ今は、表示能力の問題があるし、センサーを入れて一日中動かすとなると、まだまだ頻繁に充電しないと難しい。これから何年かしたら、可能になるかもしれません。
デジタルの技術で、もっと面白いアナログウオッチを作りたい
――活動量計入りG-SHOCK、ぜひ検討してください。増田さんとしては、やっぱり今GBシリーズでうたっている「電池交換2年」は譲れないラインですか?
増田: そうですね。お客さんが煩わしいと思う充電はさせない、そしてファッショナブルであるという点が守れれば。いつまでもやらないということはないですよ、きっとそういう時代が来るのかなと思います。Blutetoothはね、今後アナログウオッチにも適用していきたいと思ってるんですよ。そうしたらきっと、今までにない楽しいアナログウオッチが作れるはず。
僕が時計事業の責任者になって、今ちょうど10年なんです。われわれはデジタルウオッチからスタートして、G-SHOCKブームが去って売上が急落する中で、「アナログをやらなきゃダメだ」ということに気付いた。時計市場全体で見たとき、アナログのほうが市場がずっと大きいですからね。でもその中で、うちはスイスの時計メーカーとも、セイコーさんやシチズンさんとも違うポジションを作っていけると思っているんです。それは、「デジタルドライブのアナログ時計を作る」ということ。もともとの出発点であるデジタルウオッチの発想、技術を使って、アナログウォッチでいろんな動きを出していく。それが今の、うちのアイデンティティなんです。
「カシオって、デジタルの技術を使って、アナログの新しい楽しい時計を作る会社なんだな」そう思ってほしい。G-SHOCKはね、まだまだいろんな技術を取り入れて、これからもどんどん楽しくしていきますよ! ぜひ、これからも見守ってください。
――ありがとうございました。
G-SHOCK 30TH INTERVIEW
- 第1回:「30年経った今だから話せる、初代G-SHOCK開発秘話――エンジニア・伊部菊雄さん」
- 第2回:「米国でG-SHOCKブームを仕掛けた男、その4つの視点――伊東重典氏」
- 第3回:「この人がいなかったら、G-SHOCKは世に出なかった――田副美典さん」
- 第4回:「90年代のG-SHOCKブームを、コラボモデル&テーマモデルで振り返る」
- 第5回:「ブームが終わり、若者の時計離れが進む中でG-SHOCKはどうなった?――田中秀和さん」
- 番外編:「ロンドンでクチコミを使ってG-SHOCKブームを仕掛ける男――ティム・グールドさん」
- 第6回:「ファンに聞く「G-SHOCKの魅力とは?」――『腕時計王』柿原孝好編集長」
- 第7回:「なぜ私たちはG-SHOCKにハマったのか――G-SHOCKマニア座談会」
- 最終回:「転換点となったG-SHOCK、カシオはスマートウオッチを作るのか――増田裕一さん」(本記事)
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