空港で旅客機を誘導する「マーシャラー」という仕事:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/3 ページ)
国内でも海外でも、このところローカルな空港に降り立つ機会が多い。着陸後、駐機スポットに向けて地上走行する機内の窓からつい見とれてしまうのが、マーシャラーと呼ばれる人たちの仕事ぶりだ。今回はそのマーシャラーの仕事について──。
肘から先を内側に曲げて「直進せよ」
空港の現場では、マーシャリングカーについている台の上に乗ってパドルを振る。台の高さは、最高で約4メートル。雨の日の風の日もしっかりと足をふんばって、向かってくる旅客機に正確な合図を送らなければならない。ここで、Nさんから聞いた基本的なマーシャリング動作について解説しよう。
まずはパドルを持った両腕を上げる──これは「注目せよ、スポット誘導を開始する」という合図だ。そして上げた両腕の肘から先を内側に曲げ伸ばしすると、今度は「そのまま直進せよ」の意味に。右手で斜め下の方向を指し示し、斜め上に上げた左腕の肘から先を内側に振ると「左へ」。反対は「右へ」の合図になる。「速度を落とせ」という指示は、開き気味に下げた両腕を肩を起点に上下に振ればOK。そして「停止」させるときは、上げた両腕を頭上で交差させて合図を送る。
以上はマーシャリングの基本的動作の一例だが、さまざまな動作を間違いなく現場で実践できるようになるためには、確かに相当な訓練が必要だろう。
「現場に出てすでに1年近くが経ちますが、毎回毎回、緊張の連続です」とNさんは続ける。「初めてマーシャリングを担当したときは、2人の先輩が心配そうに見守ってくれるなか、あまりの不安と緊張で頭の中が真っ白になりました」
機が停止線にピタリと停止し、あとでクルーや同僚たちから「ご苦労さま」と声をかけられたときは、何にも例えようがないくらいうれしいとも彼は話す。この仕事に就く人の中には「小さいころから飛行機が大好きで、空港で働くことが夢だった」と言う人も少なくない。男職場のようにも思えるが、近年は各地の空港で女性マーシャラーの活躍も見かけるようになった。
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