空港で旅客機を誘導する「マーシャラー」という仕事:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
国内でも海外でも、このところローカルな空港に降り立つ機会が多い。着陸後、駐機スポットに向けて地上走行する機内の窓からつい見とれてしまうのが、マーシャラーと呼ばれる人たちの仕事ぶりだ。今回はそのマーシャラーの仕事について──。
空港からマーシャラーが消えた?
ところで最近、大規模な国際空港では“異変”が起きている。私は多くの場合、海外へは成田空港から出発するが、成田でもマーシャラーを見ることがなくなってしまった。
成田空港をはじめ羽田空港や中部国際空港では、赤外線レーザーで旅客機の位置を測定し、誘導するVDGS(Visual Docking Guidance System)の運用を開始している。成田では2000年から第1ターミナルで、2005年からは第2ターミナルでもこのシステムを導入。ボーディングブリッジを設置しているスポットにはすべてVDGSを置き、旅客ターミナルから離れたオープンスポットを使用する一部の便以外はマーシャラーが出てこないようになっている。先日、ドイツのフランクフルトから帰国した際に、利用したルフトハンザのボーイング747-400が誘導される様子を観察した。
VDGSのLED表示部に示される旅客機の現在位置と停止位置までの残距離をもとに、前輪が地面に引かれているライン上をきれいにトレース。所定の位置まで進み、静かに停止する。現代のハイテクは空港のこんなシーンでも活躍しているんだな、と改めて感心した。その一方で、パドルを振るマーシャラーたちの“職人芸”に出会えないのはちょっと寂しい気もしたが。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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