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コラム
2003/11/26 00:00 更新

E-biz経営学
IT革命は消費者行動を変える…というが、どのように?

携帯電話やブロードバンド(ADSLや光ファイバー)の普及が消費者行動を大きく変えつつあることは、ビジネスの最前線にいる多くの人々が実感していることだ。従来、一方的なマーケティングのターゲットでしかなかった消費者(とりわけ女性や子供)が、ネットワークを通じて影響力を増しているとしたら、これは企業にとって非常に重要だろう。

 このコラムで私が担当するのは、マーケティングあるいは消費者行動の研究から見た、IT革命や国際化のインパクトというテーマです。e-bizリサーチ・コンプレックスの他のメンバーが取り上げる企業戦略や組織戦略の問題に加え、顧客の変化を理解しておくことが重要なことはいうまでもありません。しかも、IT革命や国際化は、かつてない規模で顧客のあり方を変える可能性を秘めています。そんな話は聞き飽きた…という人もおられるでしょう。しかし、実はいろいろな議論が錯綜し、何が確かな話かというとはっきりしないのではないでしょうか。

 携帯電話やブロードバンド(ADSLや光ファイバー)の普及が消費者行動を大きく変えつつあることは、ビジネスの最前線にいる多くの人々が実感していることです。発信したメール広告への反応が異常に早いとか、サイトに訪れる人々のなかで急速に女性が増えているといった話をよく聞きます。従来、一方的なマーケティングのターゲットでしかなかった消費者(とりわけ女性や子供)が、ネットワークを通じて影響力を増しているとしたら、これは企業にとって非常に重要なことです。出会い系サイトや自殺サイトという三面記事的な話ばかり目立っていますが、その背後でマーケティングのあり方を本質的に変える、大きな変化が起きているのかどうか。

 インターネットの寵児として、CtoBと呼ばれるビジネス・モデルの登場が注目を浴びています。たとえば「空想生活」や「たのみこむ」というサイトを通じて、消費者は自分のほしいものを企業に働きかけて製品化させることができます*注。同じようなことがマーケティングのあらゆる側面で可能になってきている…有名なマーケティング学者であるコトラーたちは、これを「逆(リバース)マーケティング」と呼び、別の学者は「カスタマライゼーション」(顧客化という意味。カスタマイゼーションではないことに注意)と呼んでいます。完全なCtoBモデルではなくても、顧客へのパワーシフトが各所に陰に陽に浸透していくとしたら、顧客主導という言葉を建前としてだけ考えているわけにはいかなくなります。

注 詳しくは山下裕子・古川一郎「ビジネスケース エレファントデザイン/エンジン」『一橋ビジネスレビュー』2002年秋号、164-178。

 国際化もまた同じような意味を持っています。ウォルマートのような世界レベルでオペレーションを行う流通業が進出し、一層の価格破壊を行うとどうなるでしょう。いや、日本の消費者は品質にうるさいので、安いだけの製品は買わないという意見も有力です。しかし、安いだけではない製品が海外からもっと入ってきたら・・・。それに加えて、消費者の行動様式がより欧米に近づき、品質−価格のトレードオフを従来以上に割り切って行うとしたら…。IT革命も国際化も、消費者をよりスマート化させる可能性を秘めています。

 今後の連載では、主にインターネットが消費者行動をどう変えるかについて、アカデミックな研究の成果を紹介していくつもりです。アカデミックな研究というと小難しいだけで、役に立たないと思われるかもしれませんが、そのエッセンスを抜き出すと、意外と実務家にとっても「役に立つ」ことがあると私は考えています。もちろんハウツーとしてではなく、大局的な洞察を得るという意味で。私は長い間広告会社の研究部門という「実務界のなかの、ややアカデミックな部分」に身をおき、その後大学でマーケティングを研究・教育するという「学界のなかのやや実務くさい部分」に移りました。そうしたこともあって、実務家に役立つアカデミックな知識については多少嗅覚があるつもりです。

 今回は「前置き」だけになってしまいました。次回からは、インターネット上の消費者行動について、個々の研究の例を取り上げていきます。まずは、そうした研究の出発点ともなった、「フロー」という心理学的概念をネット・サーフィンの説明原理とした研究を紹介するつもりです。そうした「古典的」研究を振り返ることで、インターネットの歴史的な意味がわかるのではないかと期待するからです。

Copyright c 2003 Makoto Mizuno. All Rights Reserved.

関連リンク
▼OPINION:筑波大学 e-biz リサーチ・コンプレックス

[水野誠,筑波大学]

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