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2004/01/22 00:00:00 更新

わかる“MBAマーケティング”MBAの実践的マーケティングエッセンス
第3回 顧客を知る(セグメンテーション・ターゲティング)

対象となる顧客を明確にするのに必要となる3つのツール、「セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング」について検証していく

 前回はマクロに市場を捉えることについてお話したが、今回はミクロに対象顧客を知ることについてお話したい。

 自社が“どのような顧客のどのようなニーズに対し商品・サービスを提供しようとしているか”は、基礎研究段階、開発段階、発売後とすべてのステージで考えなくてはいけないと前回も述べたが、その対象顧客を考える視点・深さは各ステージで変わり、進化してくる。一貫性を持って、混乱少なく“顧客”を考えるためには何かツールが必要である。

 どのようなニーズを持った、どのような顧客に対して売るのか…を整理して考えるためのツール(マーケティングコンセプト)が「セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング」の3つである。セグメンテーションとは市場を細分化することであり、ターゲティングはセグメンテーションで細分化された市場セグメントのうちどこに狙いを定めるかを決めることである。又、ポジショニングはどこに狙いを定めるかを決めた後で、どのように顧客の頭の中に自社の商品・サービスを位置付けるかを決めることであり、これらは一連の流れではあるが違う作業である。

図1

セグメンテーションで適切に市場を細分化

 なぜ、わざわざ市場を区分けしなくてはいけないのだろうか?  すべての企業・消費者を自社が十把一絡げに囲い込むことができればよいが、全ての顧客が均一のニーズを持つのでないかぎりそれは難しい。“勝つ”ためには“自分が勝てる”条件を見極めることが大事なのだ。

 商品・サービスの開発プロセスにおいては、初期(開発段階)においては市場分析と、セグメンテーション・ターゲティングを使い、自分の商品・サービスを受け入れてくれる(くれそうな)顧客が、どこに、どのくらいいそうかを考えるウエイトが高く、後期(市場に出す直前・発売後)にはポジショニングによる差別化のウエイトが高まってくる。 セグメンテーションとは“自社が勝てるレベルへの絞込み”と“極力大きな市場規模”とのバランスをとりながら市場を区分けする作業と考えていただきたい。

 重要なのはいかに市場を切り分けるかということである。

 セグメンテーションで市場を切り分ける軸には様々なものが考えられるが、よく使われるのは

  1. 地理的変数
  2. 人口動態変数
  3. 心理的変数
  4. 行動変数
  5. 製品の使用パターン

 などであるが、どのように切り分けるにしても、最初に考えるべきは顧客のKBF(キー・バイイング・ファクター:購買要因)である。

 新製品が出たばかりのころは、KBF(購買要因)は単純であることが多い。例えば、古い話だが、ウォークマンが出たばかりのころは、“移動しながら音楽を聴きたい”というのが購買要因であろう。

 この頃はセグメンテーションは単純で、移動しながら音楽を聴きたい”ニーズを持つ層がどこにいそうかを探すこと、ニーズの啓蒙が重要である。

 ウォークマンが市場に浸透してくるにつれ、KBFは“移動しながら音楽を聴く”だけでなく“音質が良いこと”や“耐久性が良いこと”や“デザインが良いこと”や“価格”など増加し複雑になってくる。

 人によってこれらのKBFに対する優先順位は違ってくるだろう。

 ある人は、とにかく“音質が良い”ことが1番で、“デザインの良さ”が2番、“耐久性”や“価格”はほとんど重要性をもたないのに対し、ある人はとにかく“価格”が安いことが1番で、次は“耐久性”、“音質”や“デザイン”は気にしないかもしれない。

 この段階では、このようなKBFの優先順位が似た人々を一つのセグメントとしてみなすのだ。下図においてはKBFの優先順位の組み合わせにより3つのセグメントに分けている。もし、自社が低価格で耐久性のある製品つくりには自信があるが、音質の良さやデザインに自信が無いのであればセグメントAやCではなく、セグメントBを狙うべきであろう。

図2

 ここで重要なのは、KBFは市場の進化(プロダクト・ライフ・サイクルの進化ともいえるが、このプロダクト・ライフ・サイクルは後日ご説明する)とともに変わり、それにつれてセグメンテーションも変化することがあるということである。ハイテクのマーケティングの落とし穴の一つはこのKBF・セグメンテーションの変化である。

 商品導入初期はいわゆるオタクや、アーリームーバーが主顧客になることが多く、かれらのKBFは“製品品質の良さ”だったりする。市場が発展し、顧客層が広がってくると多くの顧客のKBFの優先順位は“使用方法のわかりやすさ”や“価格”や“アフターサービスの良さ”が高くなることが多い。

 この変化に的確に気づかないと、“使いやすさ”や“こなれた価格”を要求する顧客が増えてきているのにタイムリーに商品・サービスを合わせられず、折角たちあがりかけた市場を横から現れた後発企業にさらわれてしまうことになるのだ。

 こうして読んでいると、そんな顧客のKBFの変化に企業側が気づかないはずがなかろうと思われる方も多いかと思うが、それが実に多いのである。その理由の一つが、セグメンテーションの軸の自己目的化である。実は先ほど5つほどあげたセグメンテーションの軸はKBFそのものではなく、あるKBFを持つ顧客を見分ける2次的指標である場合が多い。

 例えば、製品導入初期に“品質重視”のアーリーアダプターを狙おうとしたときに、顧客は額に“僕はアーリーアダプターです”という札を下げているわけではないので、そうした顧客が仮に首都圏の18−35歳の男性に多いということであれば、首都圏という地理的変数と、18−35歳の男性の人口動態変数がセグメンテーションの軸になっているというだけの話なのである。

 問題はこのセグメンテーションの軸を一度設定すると、その後なぜこの軸を設定したかという理由を忘れて、市場が進化し、KBFが変化していても以前のセグメンテーションのまま市場を見続けている企業が少なからずいるということである。KBF(の優先順位)の違う顧客層としてのセグメンテーションと、その顧客層を認知するための手段としてのセグメンテーションの軸は区分けして考えなくてはいけないのである。

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▼OPINION:ニッセイ・キャピタル

[池上重輔,ニッセイ・キャピタル]

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