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2004/02/05 00:00:00 更新

〜「情報メディア白書2004」から
電通総研が斬る!地上デジタル放送の論点(2)

電通総研刊行の「情報メディア白書」のデータを読み解きながら、地上デジタル放送の論点について考える。今回は、情報メディアにとっての「デジタル化」の意味について検証していく。

 電通総研では1994年から毎年「情報メディア白書」を刊行している。前回に引き続き、この「情報メディア白書」のデータを読み解きながら、地上デジタル放送の論点について考えてみたい。

 今回は、情報メディアにとっての「デジタル化」の意味について考えてみよう。

メディアの発展の歴史的パターン

 前回示したとおり、生活空間における情報メディアの主役は「映画」「ラジオ」「白黒テレビ」「カラーテレビ」と入れ替わり、そして次世代の主役として「デジタルテレビ」が登場しようとしている。

 このような情報メディアの歴史から注目すべき点として、メディアの主役の地位は入れ代わり続けてきたものの、旧来のメディアも死滅するのではなく、「専門化」「細分化」することで自らのポジションを確立してきた、ということがある。

 例えば1960年頃まで「お茶の間」の主役の地位にあったラジオは、その役割をテレビと交代した後も、「車内」や「台所」でのいわゆる「ながら聴取」という場所の移動と、「深夜帯」で若者リスナーを開拓するという時間帯の移動を果たすことで、テレビとは別個のポジションを確立した。

 デジタルテレビはどのような歴史をたどっていくのであろうか? (アナログ)カラーテレビの後を引き継ぎ今後も有力で低価格(無料)のマスメディアとして主役の地位に君臨し続けるのか、それとも映像コンテンツが流通する伝送路が多様化し、テレビの競合が登場する中で、テレビさえも「細分化」「専門化」の方向に向かうのか、その問いが投げかけられようとしている。

図

図:メディア発展の歴史的パターン

(参考文献「マス・オーディエンスの未来像」(学文社)

メディアのデジタル化とは?

 そこで次に、そもそも情報メディアにおける「アナログ」「デジタル」とは何なのか?というところから「デジタル」化の意義について考えてみたい。

 「アナログ」では、音の波形や映像の色調をそのままの形で保存し、伝達する。それに対して「デジタル」では、音声信号や映像を0と1という電気的なデジタル符号に変換した上で、再生時に人間の視聴が可能な形に変換する。

 したがって、従来の「アナログ」の情報メディアでは、原則としてその「記録されたとおり」にしか再生できない。それに対して、「デジタル」とは並べ替え、誤りの修正、補正、要約、暗号化、等々の加工を容易に行った上で保存や伝達が可能となる。

 このような「アナログ」→「デジタル」への移行を果たしたわかりやすい例として、「レコード」から「CD」への移行が挙げられる。アナログレコードでは頭から順に曲を聞かなければならないが、CDでは曲の再生順を簡単に変えられるし、また複製も非常に簡単に行える。

受動的なアナログ、能動的なデジタル

 つまり、「アナログ」な情報メディアは「送り手が設定したとおりの内容」で利用しなければならない点で、本質的に「受動的」であると言える。それに対して、「デジタル」な情報メディアでは、受け手の側で情報を編集・加工することが容易である点で「能動的」な性質を有していると言える。

 デジタル化を通じて、「受身」の視聴形態の王様とも言うべきテレビに対して、「能動的」という性質が持ち込まれることは、視聴者にとっても、またテレビを支える業界側にとっても大きな挑戦となる。

 放送のデジタル化を契機として、今までのように放送局側の仕立てたように、編成されたとおりに番組を視聴するのではなく、自分の好みに合った番組やサービスを自由に選択できるPVRやビデオ・オンデマンド、更には双方向データサービス、などの開発が進められている。

図

「効率性」「経済性」とデジタル化

 情報メディアのデジタル化を捉えるもう一つのキーワードとして、「効率性」「経済性」が挙げられる。デジタル化は、送受信するデータを圧縮したり再編集したりすることで、伝送効率を大幅に向上させるため、小型で高度な機器の設計が容易となりやすい。

 典型例が携帯電話である。携帯電話においては、1993年にデジタル化が開始され、その後2000年までにアナログ携帯電話サービスはすべて廃止、デジタル化への移行が完了している。そして完全にデジタル化することで、少ない周波数帯でもより多くのユーザーを収容できるようになった上、携帯電話機の小型化や高機能化もより進めやすくなった。

 そしてこのような技術的な「効率性」の向上は、「経済性」という果実を生み出す。前述の携帯電話や、インターネットをはじめとする情報通信に係るコストはこの10年の間急速に値下がりした。そして、その結果利用者層の底辺が広がり、市場規模は急速に拡大することになった。

 下図の通り、携帯電話の市場規模はこの10年で10倍にもふくれあがっているが、これはデジタル化の恩恵を受けたところも大きい。そしてこの「効率性」「経済性」という果実がテレビやその周辺にももたらされようとしている。

図

(クリックで拡大表示)

(電通総研作成、「情報メディア白書2004」p162より)

「デジタル」的な考え方だけで足りるのか?

 ただその一方で、放送に関しては「デジタル」的なものだけで議論をするわけには行かない点に難しさがある。前述の通り「デジタル」を進める原動力とは、「経済性」や「効率性」である。

 しかし、放送に関してはその一方で「報道」という機能や「緊急災害時の情報網」といった公共性の極めて高い役割を担っており、これは「経済性」や「効率性」とは全く異なる視点からの議論が必要になってくる。

 また、テレビは日本でも放送開始から50年もの歴史を経て広く生活者に定着しているメディアである。生活者はテレビに対して「受け身」で情報を摂取するという行動に馴染みきっており、そうした中で、デジタルが得意とする「能動的」な情報行動をテレビにどこまで求めるのかというところは、なお議論を要するところであろう。

 さて、次回は生活者の情報行動に関する「支出」という観点から、地上デジタル放送の論点を検証してみたい。

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▼電通総研が斬る! 地上デジタル放送への論点(1)

関連リンク
▼OPINION:電通総研

[井上忠靖,電通総研]

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