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2004/04/15 00:00 更新

通信と放送の非融合〜何が両者の間を隔てているのか?〜
第11回 テレビに双方向機能は必要か〜ヨーロッパに見る通信と放送の融合(3)

今回は番組連動型、独立型双方向サービスの収支モデルを検証するとともに、双方向CMをめぐる新しい動きを紹介する。

双方向サービスの採算は?

 双方向番組制作の課題の一つは制作コストの回収方法である。イギリスで番組の双方向化にもっとも熱心なのはBBCで、デジタル放送の魅力の一つとして双方向サービスを掲げ、ドキュメンタリー、子供向け番組や主要スポーツ中継に大掛かりな双方向機能を盛り込んでいる。多額の制作コストを必要とする双方向番組に積極的に取り組めるのは、受信料という安定した収入基盤があるためといえよう。

 対照的に商業放送局の取組みは限定的で、人気の高いリアリティーショーなどでは視聴者投票が行えるが、その機能、規模はBBCには及ばない。商業放送局が提供する双方向番組では、電話回線利用料にプレミアム料金が設定され、その一部が放送局に入る場合が多い。

 双方向サービスによる利益は番組制作会社、放送局、プラットフォーム事業者等の間で分配するのが一般的なモデルである。双方向アプリケーション開発事業者まで含むと関与するプレイヤーの数が多いだけに、安定した収益源の確保が双方向サービスの最大の課題とされてきた。

図1

BSkyBの双方向関連売上〜全収入の1割近くに成長

 ここで順調に双方向関連収入を伸ばしているBSkyBの収益構造を見る。衛星デジタル放送Sky Digitalを運営するBSkyB の経営課題は、付加価値の高いサービスを提供して加入者一人当たりの売上高を伸ばすことである。そのため独立型サービスを含めた双方向サービスの提供に力を入れている。

 BSkyBの2003年度総売上31.86億ポンドの7%を双方向関連収入(双方向アプリケーションを利用するサービスの売上)が占めている。

図2

 非BSkyB系事業者が双方向サービスを提供する場合、Sky Digital上にチャンネルを新しく立ち上げるか、Sky Digitalの双方向専用プラットフォームSkyActiveのサービスの一つとして提供する選択肢がある。いずれも売上げの一部をBSkyBが徴収する仕組みで、サービス提供に要する初期費用が安い後者のほうが配分比率は高めになっている。

図3
図4

 

賭けが最も有望な収入源?

 しかしサービス内容で見ると、BSkyB の双方向サービスの最大の収入源は「賭け」にある。2003年度のBSkyBの双方向サービス関連売上2億1800万ポンドの半分以上にあたる1億1700万ポンドはスポーツくじなどの賭けによるものである。同社はヨーロッパの有料放送事業者として初めて賭け専門子会社、Sky Bet社を設立しているが、一般的な双方向サービスを扱うSky Active事業とSky Bet社が扱う賭け事業の収入比率は2003年末には逆転している。

図5

 Sky Bet社は競馬から宝くじ、カジノ型ギャンブルにいたる多種多様なサービスを扱っている。英国は競馬などの賭けが広く定着しており、ギャンブルに対する規制もこれまで比較的緩やかだったことが背景としてある。

 しかし双方向サービスの収支モデルを考える上ではあまりに特異なケースにあたり、双方向サービスを提供するコストとメリットは、提供主体が公共放送局、商業放送局、有料放送プラットフォームのいずれであるかに応じて異なる捉え方をする必要があるだろう。

双方向CMの可能性 〜広告主が情報発信の場を設定する動きも

 テレビの双方向機能はCMのあり方をも変える。イギリスで双方向CMを全国規模で展開できる唯一のプラットフォームであるSky Digitalが扱う双方向CMキャンペーン数は毎年倍増傾向にある。しかし消費者との深いコミュニケーションを望む広告主からはSky Digital上の双方向CMのあり方に対する不満が出始めている。

 番組放送中の視聴者の双方向コンテンツへの流出を避けるため、双方向CMを本編開始直前には入れない等の配慮がプラットフォーム側で働く。さらに現在Sky Digitalで放送される双方向CMの約8割は、BskyBが用意したテンプレートを利用したものである。この方式では、商品サンプルや追加資料の請求など限られたやり取りしかできない。

 双方向CMで企業ブランド価値を高めたい広告主には、現在の双方向CMはダイレクトメールの置換えに過ぎず、クリエイティブな要素が足りないと映る。

 そこで2003年夏にジレット、P&G、ブリティッシュテレコム、ホンダなど英国の主要広告主10社が、「バーチャル」双方向広告チャンネルの設立を目指しConsortium4TV(C4TV)を結成した。自ら放送帯域を確保し、入口にあたる双方向CMを経由してSky DigitalのEPG(電子番組表)にあらわれない「双方向CM専用チャンネル」でさらに深い情報を提供しようとする試みである。

 この流れに対応するかのように今年1月にBSkyBは双方向CM向け帯域使用料を平均30%引き下げた。それだけC4TVの動きに対する危機意識が強いと現地では見られている。

 C4TVの今後の展開は明らかではないが、自ら帯域を確保した広告主がCM枠に拘束されない双方向コンテンツを通して消費者との関係強化を図ることになれば、放送プラットフォーム上に放送事業者がコントロールできない領域が出現することになる。インターネットではすでに自社サイトを通した企業ブランディングが盛んとなっている。同じことがテレビでも実現するのかを考える上でC4TVの事例は大変興味深い。

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関連リンク
▼テレビに双方向機能は必要か〜ヨーロッパに見る通信と放送の融合(2)
▼テレビに双方向機能は必要か〜ヨーロッパに見る通信と放送の融合(1)
▼OPINION:電通総研

[森下真理子,電通総研]

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