時間の見積もりがうまくできなくて困る【理論編】シゴトハック研究所

仕事を片づけていくには時間の見積もりが必須です。しかし問題は、その見積もり精度を高めていくこと。Excelを使って作業記録をつけ、うまく時間を見積もっていきましょう。

» 2006年07月27日 16時44分 公開
[大橋悦夫ITmedia]

今回の課題:作業記録をつける

状況説明:「明日は終日会議の連続でスケジュールが詰まっている」あるいは「午後は企画書作りで缶詰めだ」といった見通しが立つ場合があります。このような時「明日は会議だけで一日が終わってしまうので仕事が進められない」「半日もあれば企画書は完成するだろう」という予測が同時に立ちます。


 でも、実際のところはどうでしょう。

 会議で詰まっているといっても、会議と会議の間にはちょっとした空き時間ができたり、企画書作りも半日では到底終わらずにその日は終電までかかりきりになったり、といった想定外の事態に見舞われることがあります。

 何となく見えていたはずの見通しが、フタを開けてみたらまったく甘いものであり、思わぬ苦労をさせられるわけです。一度ならまだしも、繰り返してしまうのであれば問題です。

 こうならないために、言い換えれば現実的で精度の高い見通しを立てるには、どうしたらいいでしょうか。

コツ:決められたフォーマットに沿って作業記録を付ける

 一度でもやったことがある仕事であれば、どれぐらいの時間がかかるかはある程度予測できるものです。問題はやったことがない仕事でしょう。

 その前に、なぜ「やったことがある仕事」なら時間の予測ができるかを考えてみると、その仕事を構成するパーツがどれくらいあるかが見えているからであり、仕事が「量」として見えているからだといえます。

 逆に、「やったことがない仕事」は、どんなパーツがいくつあるのかが分からないために仕事を「量」として把握することができず、従って見通しも立てづらくなるわけです。仕方なく「まぁ3時間くらいかな」といういわゆる「えいや!」で立てざるを得ません。

 例えば、企画書作りであれば、内容は毎回変わるとしても共通する作業要素(=タスク)はあるはずです。このタスクをあぶり出し、それぞれについてどの程度の時間がかかるかを見積もっていくことで、これらの合計時間が企画書を作るのに必要な時間ということになります。

 そして、この数字を意識しながら作業を行い、実際にかかった時間をタスクごとに記録していきます。これと見積もった時間とを比較することによって、ギャップの大きな、すなわち予想以上に時間がかかったタスクについて、なぜそれを見通せなかったのかの原因を探ります。原因が明らかになれば、次回以降の見通しを立てる際の参考になりますので、見積もりの精度が上がっていくでしょう。

 上記のような分析を行う上では、「どのタスクにどれだけの時間がかかったのか」という作業記録が欠かせません。

 そこで、Excelにタスクを書き出し、それぞれの行に見積時間を振っていきます。さらに開始時刻と終了時刻を入力する欄、そして実績時間の欄を設け、実績時間は実際に掛かった時間として終了時刻と開始時刻の差を算出するための以下のような数式を入れておきます。

  =IF(終了="","",(開始-終了)/TIMEVALUE("1:00"))

  ※終了時刻を入力しない限り実績時間は計算されないようにしています。


 こうすることで、このシートはタスクリストであると同時に作業時間を記録する台帳にもなります。

 例えば、図1は「A社企画書作成」というタスクに2.5時間を割り当てていたものの、実際には3時間を投入しても当初想定していたような完了にたどり着けなかったことを表しています。

図1


 そこで、スケジュールを立て直してみます。

やるべきことは、3時間をかけて消化できたのはどのような作業なのかを明らかにすることです。そして、ここから完了に至るために必要な残作業を漏れなく洗い出し、これらを新たなタスクとして追加していきます。それが図2です。

図2


 単に「A社企画書作成」というだけではタスクのくくりとしては大まか過ぎでしたし、2.5時間という見積もりは「えいや!」で決めたものであって実際にはその倍以上の時間が必要だったことがわかります。どうしても「今日中に終わらせたい!」という気持ちが強いと、冷静に作業レベルに分解するのが面倒になり、「えいや!」の誘惑にかられやすくなるものです。

 でも、そういう時こそ、ぐっとこらえて現実に合わせてスケジュールを立て直すことが結果的には早道になることが少なくありません。

 今回ご紹介した、

  1. タスクの洗い出し
  2. タスクごとの時間の見積もり
  3. 実際にかかった時間の記録

 という一連のステップを繰り返していくことにより、自分がどんな作業にどれだけの時間が必要なのかが分かるようになります。そして、精度の高い時間の見積もりが、さらにはブレの少ないスケジュールが立てられるようになるはずです。

実践編:実際の現場では?

筆者:大橋悦夫

仕事を楽しくする研究日誌「シゴタノ!」管理人。日々の仕事を楽しくするためのヒントやアイデアを毎日紹介するほか「言葉にこだわるエンジニア」をモットーに、Webサイト構築・運営、システム企画・開発、各種執筆・セミナーなど幅広く活動中。近著に『「手帳ブログ」のススメ』(翔泳社)がある。


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